[ 詳細報告 ]
分野名：細菌性食中毒
登録日：2016/03/08
最終更新日：2016/05/27
衛研名：沖縄県衛生環境研究所
発生地域：17都府県
事例発生日：2007年2月9日
事例終息日：2007年2月14日
発生規模：利用者1,753名，
患者被害報告数：有症者241名
死亡者数：0名
原因物質：エビウニ焼きのソース
キーワード：観光客，Salmonella Enteritidis，伊勢エビウニ焼き，ソース，卵
背景：
観光客の利用が多い飲食店での食中毒事例で全国広範囲に患者が発生した。
概要：
2007年2月，那覇市内の飲食店においてSalmonella Enteritidis（以下SE）による食中毒が発生した．本事例は，主に観光客が利用する人気料亭が原因施設であったため，患者は東京，奈良，宮城など17都府県にまたがり利用者1,753名，有症者241名を超える大規模な食中毒事件に発展した．その概要について報告する．
2007年2月13日（月），県薬務衛生課を通じ東京都より，同月10日から2日間にわたり，社員旅行で来沖した98名のうち40名が食中毒様症状を呈しており同旅行日程中に利用した施設の調査について依頼があった．その関連施設のうち，那覇市内の飲食店について，さらに複数県の同飲食店利用者が食中毒様症状を呈しているとの情報を入手したため，立ち入り調査を行った．
2月14日，施設に対し利用者名簿の提出依頼，調理場の調査を実施した．調理人からの聞き取りにより，未殺菌液卵（卵黄）を材料としたウニソース（焼伊勢海老用）を数日分（500食分以上）一度にまとめて調整していることが判明した．
収去したウニソースをDHL，SS寒天培地に直接分離培養を行い，平行してウニソース，伊勢エビウニ焼き及びその他の食材について緩衝ペプトン水で前増菌，ラパポート・バシリアディスブイヨンで増菌培養した後分離培養を行った．
2月15日ウニソースの直接分離培地からサルモネラ菌の定型的集落が確認された（後日，確認試験でSEと判定された．）こと，有症者症状がサルモネラ食中毒の症状に合致していることから，サルモネラ食中毒が疑われた．
同日，当該施設より利用者名簿を入手し，症状の有無について聞き取り調査を開始した．東京都の有症者10名の便から，サルモネO9群（後日SEと判定された．）が検出され，早急に改善措置を行わせる必要性から同施設に対して5日間の営業停止処分を命じ，施設の改善指導，従事者への衛生教育を行った．
2月9日から11日にわたり同施設で提供された食事のうち3日間とも提供されたものは数種類みられたが，そのうち全くの同一ロットであるといえるものは伊勢海老ウニ焼にかけられたウニソースのみであり，また，ウニソースからSEが分離された事から，当該食品を原因食品と断定した．
後日，国立感染症研究所にて奈良，宮城および茨城県で分離された患者株と検食の伊勢エビウニ焼き，ウニソースおよび従業員の便から分離したSEについて，PFGEおよびファージによる型別を実施し詳細な株の比較を行った．その結果，各県の患者分離株，伊勢エビウニ焼きおよびウニソースのファージ型はPT21でPFGEパターンも一致した．しかし，従業員便から分離株PFGEパターンは一致したものの，ファージ型はPT6aで異なっていた．なお，従業員は当該食品を食していなかったため、汚染源はウニソース原料の未殺菌液卵（卵黄）であったと推測された．
原因食品の伊勢海老ウニ焼は，半分に割られた伊勢エビの上にウニ，液卵，油などで調整されたウニソースをかけて熱風で焼き上げ仕上がる．伊勢エビの身は一旦殻から取り出し，食べやすい大きさに刻んだ後再び殻の中に戻されており，刻まれた身の間や，身と殻の間にソースが入り込むと加熱不足が起こりやすいと考えられた．
ウニソースは数日分まとめて調製されたため，2月9日から11日の3日間に渡ってSEに汚染されたウニソースが提供されつづけたことになる．
当該飲食店の利用客名簿から推定した3日間の総利用者数は1,753人（内，調査票が回収できたのは566名分）であり，有症者数241人が確認された．当県ではホテルや飲食店にて卵を用いたソースを原因食品としたSEの集団食中毒が過去に数件発生しており，衛生講習会においても卵を使用した料理の作り置きの危険性について度々注意喚起をしてきたところであったが，今回の事例により，更なる周知の重要性を認識した．また、今回の事例をとおし、SEの疫学マーカーは、PFGEおよびファージ型別試験の両方を実施することにより、さらに詳細な情報が得られることを再認識した。
原因究明：
診断：
地研の対応：
行政の対応：
地研間の連携：
国及び国研等との連携：
事例の教訓・反省：
現在の状況：
今後の課題：
問題点：
関連資料：
病原微生物検出情報Vol. 28 p200-201：2007年7月号