[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:東京都健康安全研究センター
発生地域:東京都内
事例発生日:2008年4月
事例終息日:
発生規模:集合住宅(簡易専用水道)の1世帯
患者被害報告数:0名
死亡者数:0名
原因物質:熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers、TPE)
キーワード:蛇口、異物、熱可塑性エラストマー、Thermoplastic Elastomers
背景:
水道水の蛇口からは配管や給湯器等水道施設の構造物に由来する異物が出てくる場合がある。蛇口からの異物は単体であることは希であり、鉄や鉛等の金属やゴムや塩化ビニル等の樹脂の混合物である場合がほとんどである。したがって、異物の検査は酸・有機溶媒への溶解性、IR分析、熱分解性等について行い、それらの結果と文献情報をもとに総合的に評価し、異物の同定を行っている。
概要:
築8年の集合住宅(簡易専用水道)で、台所の混合水栓蛇口に付いている網に緑白色の異物が引っかかる旨の連絡が保健所にあった。保健所の職員は直ちに現地調査に赴き、異物を収去した。保健所からの依頼により当該異物を検査した結果、混合水栓の内面に使用されていたTPEの劣化物と推察された。
原因究明:
現地調査により、当該世帯の別の蛇口(洗面所に設置)の網には異物は認められず、同集合住宅の他の世帯では異物が認められないことから、混合給水栓自体に問題があると推察された。当センターの検査により、異物は緑白色で、塩酸、硫酸、フッ酸などの酸類にはほとんど溶解せず、酸溶解液中に銅が若干含まれている程度で、その他の金属は含まれていなかった。アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどの有機溶媒にもほとんど溶解しなかった。IR分析ではライブラリー検索によりpoly(2-decyne)、poly(1-octene)などの樹脂であると推察された。東京都水道局でも同様な事例報告があり、報告書に示されているTPEの劣化物のIRデータと当該異物のIRデータは非常によく類似していた。保健所において当該給水栓の配管を調べたところ、内側に劣化が認められた。また、この混合水栓の製造メーカーに問合せたところ、2002年以前の製品では配管の内側にTPEの一種であるポリオレフィン樹脂だけを使用していいたため、劣化によりTPEが剥離する事例があったが、2002年以後はポリブデン樹脂を内側にした二層構造に変更しており、現在販売している製品では、この様なことは起こらないとの回答を得た。
診断:
上記の検査結果、文献の情報、実地調査および製造メーカーの回答を総合的に評価し、本異物は混合水栓の給湯側配管の内側に使用されているTPEが劣化により剥離し、蛇口の網に異物が捕集されたと推察した。
地研の対応:
水道の蛇口等からの異物の検査はほとんどが東京都の水道局で実施しているが、相談が保健所にあった場合には保健所環境監視員が現地調査に赴き、当該異物を収去し、当センターに検査を依頼する体制がとられている。本事例においても搬入された異物について検査を実施した。
行政の対応:
保健所職員が現地調査と試料採取を行い、異物の分析結果をふまえて所有者に対して給水栓の交換を指導した。
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
関連の学会等に積極的に参加し、情報収集に努める必要がある。
現在の状況:
今後の課題:
なし
問題点:
関連資料: