[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:佐賀県衛生薬業センター
発生地域:佐賀県佐賀市
事例発生日:2008年2月26日
事例終息日:2008年3月24日
発生規模:被害者数:76名 死亡者数:0名
患者被害報告数:
死亡者数:
原因物質:腸管出血性大腸菌O26
キーワード:集団発生、修学旅行、腸管出血性大腸菌O26
背景:
腸管出血性大腸菌感染症は、ベロ毒素を出す腸管出血性大腸菌に汚染された食物や水からの経口感染、また、感染している人や無症状保菌者からの二次的感染がある。代表的な血清型としてO157、O26、O111等があり、本菌による感染症の報告は近年増加傾向にある。
概要:
佐賀市内の高校において、修学旅行先のオーストラリアにて腸管出血性大腸菌O26に感染したと思われる事件が発生した。参加者234名を対象に検便を行った結果、有症者87名のうち36名から、無症状者147名のうち36名から腸管出血性大腸菌O26:H11(VT1)が検出された。また感染者の家族205名を検便した結果、4名(無症状)からも腸管出血性大腸菌O26:H11(VT1)が検出された。同時期に同様の日程でシドニーを訪れた横浜市の専門学生からも腸管出血性大腸菌O26が検出され、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)の泳動パターンが佐賀県患者由来株のものと一致していたことから、滞在先での感染が強く疑われた。
原因究明:
有症者87名のうち36名から、無症状者147名のうち36名から、また感染者家族205名のうち4名から腸管出血性大腸菌O26:H11(VT1)が検出された。検出された腸管出血性大腸菌O26株について、制限酵素Xbal IによるPFGEを行った結果、30株中28株が同一の遺伝子パターンであった。
旅行期間中の喫食状況については、原因と推定される共通食品は見出せなかった。また、本事例、横浜事例の共通行程に動物園がはいっていたことから、動物と接触することによっての感染も推測されたが、接触状況から動物の種類による感染率の差はみられなかった。
診断:
地研の対応:
管轄保健福祉事務所検査室で行われた腸管出血性大腸菌が疑わしいと思われる菌株の送付を受け、Vero毒素検査を行った。また、陽性分離株についてPFGE解析を行い、相関性について調査した。
行政の対応:
管轄保健福祉事務所が患者の疫学調査を行った。修学旅行参加者全員の検便を実施し、健康調査を行うとともに、家族等について感染防止対策の指導を行った。
地研間の連携:
地研間の連携
同時期にシドニーを訪れた横浜市の専門学生からも腸管出血性大腸菌O26が検出されたため、譲渡を受けた菌株のPFGE解析を行い関連性の調査を行った。
国及び国研等との連携:
国立感染症研究所感染症情報センターFETPと協議し、現状説明及び今後の対策について検討した。FETPはオーストラリアの伝染病担当との情報共有を行った。また、PFGEによるDNA解析については国立感染症研究所から技術的なアドバイスを得た。
事例の教訓・反省:
初発の患者の届出が帰国後10日と日数が経過していたことや、推定される感染地域がオーストラリアであるため、食材等の検査を行うことができなかったことから、原因食品または感染経路まで特定できなかった。また、本事例では、旅行の初日から数名がなんからの症状を訴えており、国内で感染し旅行中に感染拡大した可能性も否定できなかった。
現在の状況:
今後の課題:
長期間に亘って感染者が出現し、帰国後における生徒間の二次感染も疑われたことから、今後、修学旅行の学校現場等での対応については、帰国後少なくとも1週間程度の健康観察とともに、有症状者が複数確認された時点での迅速な保健所等への情報提供が必要だと思われた。また、感染者家族への二次感染も見られたことから、二次感染対策の重要性が痛感された。
問題点:
関連資料:
病原微生物検出情報 月報 Vol.29 No.6(2008)