[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:栃木県保健環境センター
発生地域:
事例発生日:2008年9月8日
事例終息日:
発生規模:1名
患者被害報告数:1名
死亡者数:0名
原因物質:きのこ(テングタケ類(疑))
キーワード:きのこ、下痢、嘔吐、テングタケ類、アマニタトキシン類、アマニチン、ファロイジン
背景:
過去5年間の、栃木県における自然毒の関与が疑われる食中毒は19件起きており、うち8割近い15件はきのこに関連したものである。
概要:
知人からもらった数種のきのこを、昼に家族3人で、きのこ炒めときのこ汁として喫食。同日夜に内2人が汁の残りを喫食したところ、内1名が翌日未明に下痢、嘔吐、腎機能障害等の症状を呈し、医療機関を受診し入院した。喫食残品のきのこの形態、成分分析結果及び患者の症状から、きのこによる食中毒と断定された。
原因究明:
フローにより調製した試料溶液について、LC/MSを用いてα-アマニチンとファロイジンを分析したところ、3)からα-アマニチン0.28μg/gを検出した。他の結果は全て定量下限値0.25μg/g以下であった。
形態鑑別の結果と症状及び成分分析の結果に矛盾がないため、きのこによる食中毒と断定された。
診断:
地研の対応:
保健所からの行政依頼により、1)きのこ汁(実)、2)きのこ汁(汁)、3)未調理きのこ(白色)及び4)未調理きのこ(茶色)の4検体についてアマニタトキシン類を検査した。なお、3)と4)は冷凍保存されていたものであった。
行政の対応:
通報を受けた保健所が喫食調査とともに県立博物館にきのこの鑑別を依頼。テングタケ類の可能性が高いとの結果を元に、当センターにアマニタトキシン類の検査を依頼。結果についてのプレス発表と、有毒植物による食中毒への注意喚起情報の提供を行った。
地研間の連携:
分析法について各地研あてメールで問い合わせたところ、名古屋市衛生研究所から資料を提供していただいた。
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
保健所が医療機関や博物館と連携をとり、きのこの鑑別結果等をもとに検査項目を絞ってきたので、迅速な対応が可能であった。
現在の状況:
本センターでは平成14年にも同様の検査を行っており、情報や経験の蓄積が進んだ。
今後の課題:
食中毒の場合、毒性データが定量的に明らかでないものは、定量下限値をどの位に設定するのが適当であるか判断が難しく、検討の必要性がある。
問題点:
関連資料:
1)寺田久屋 他,調理食品中のアマニタトキシンの定量,名古屋市衛研報,8-10(1995)
2)西沢千惠美 他,高速液体クロマトグラフィーによる血清中アマニタトキシン類の同時分析法,中毒研究,16,441-445(2003)
3)寺田久屋 他,名古屋市内に自生するドクツルタケのアマニタトキシンについて,日本食品衛生学会第70回学術講演会抄録,p23
4)板野一臣 他,ドクツルタケ中のアマニタトキシンの分析,大阪府立環境研報告平成
12年度第63集,48-51(2001)
試験方法のフロー及び分析条件
[資料参照]