No.1554 ジャガイモによる食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:神奈川県衛生研究所
発生地域:神奈川県藤沢市
事例発生日:2000年7月18日
事例終息日:
発生規模:摂食者93名
患者被害報告数:65名
死亡者数:0名
原因物質:ソラニン、チャコニン
キーワード:ジャガイモ、α-ソラニン、α-チャコニン、アルカロイド、小学校

背景:
ジャガイモには有毒なポテトグリコアルカロイドが含まれており、その約95%はα-ソラニンおよびα-チャコニンである。新芽や緑色部分に多く含まれ、多量に摂取すると、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛等の症状を示す。小学校で教材用に栽培したジャガイモを食べ、集団食中毒を発生した例がある。

概要:
平成12年7月18日に、藤沢市内の小学校6年生93名が茹でたジャガイモの皮を剥かずに食べたところ、65名が10分~1時間40分後に吐き気、腹痛、頭痛等の症状を示した。このジャガイモは理化の教材用に栽培したもので、患者はジャガイモを食べた6年生のみで、これ以外に共通食はなかった。

原因究明:
ジャガイモの品種はメークイーン、表面が緑化した物もあり、すべて50g以下の小さな物で10g以下の物も含まれていた。残品のジャガイモから高濃度のα-ソラニン、α-チャコニンが検出され、食中毒の原因と推定された。このジャガイモが栽培された畑は粘土質で良く耕作されておらず、さらに7月上旬の台風による土の流出で、ジャガイモが土から出て日光が当たったことが疑われた。ポテトグリコアルカロイドは皮むきにより減少させることができると言われているが、この事例では皮を剥かずに食べたことが原因の一つとして考えられた。

診断:
残品は小学校で茹でた物と生のままの物があり、茹でジャガイモについては表面が緑化した物、緑化が少なく褐色の物に分けて分析を行った。生ジャガイモは、すべて緑化し小さな物であった。試料のジャガイモは、皮付きのまま全体を細切、混合して秤量した。
小さい個体の場合は複数を合わせ同様に処理した。試料にメタノールを加えてホモジナイズして抽出し、遠心分離した上清を分取、Sep-PakC18で精製した。HPLC条件はカラムにAsahipak NH2-P50、移動相はアセトニトリル-10mmol/リン酸緩衝液(pH5.0)(80:20)、検出はUV208nmを用いた。
分析結果をα-ソラニンおよびα-チャコニンの合計量で示す。茹でた緑色の物は401~1,299mg/kg、茹でた褐色の物は227~545mg/kg、生の緑色の物は148~942mg/kgであった。

地研の対応:
搬入された残品のジャガイモのα-ソラニンおよびα-チャコニンの分析を行った。

行政の対応:
保健福祉事務所が小学校で聞き取り調査を行い、ジャガイモによる食中毒が疑われたため、残品の検査を当衛生研究所に依頼すると共に、ジャガイモの栽培状況を調査した。

地研間の連携:

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:
標準品を所有していなかったため、入手までに時間がかかった。用いたHPLC条件では測定時間が長く必要であった。

現在の状況:
測定時間が短く、標準品が無くてもポテトグリコアルカロイド含有の推定可能な、LC/TOF-MSを用いたジャガイモ中のα-ソラニンおよびα-チャコニンの分析法を作成した。平成21年度からLC/TOF-MSで測定している。

今後の課題:

問題点:

関連資料: