[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性感染症
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:川崎市健康安全研究所
発生地域:神奈川県川崎市
事例発生日:2013年8月
事例終息日:2013年9月
発生規模:患者及び無症状病原体保有者23名
患者被害報告数:有症者17名
死亡者数:0名
原因物質:腸管出血性大腸菌O145:HNM(VT1)
キーワード:腸管出血性大腸菌、O145、VT1、保育所、集団発生
背景:
2013年8月から9月にかけて、川崎市内の保育園児17名が腸管出血性大腸菌014(5 VT1)に感染した。主な症状は、下痢、発熱(血便1名含む)であった。
患者のほとんどが1歳児クラスに限局されていた事例であったが、原因は不明であった。
症状は消失したものの、約2か月と長期にわたり保菌している園児も認められた。
市内では、過去に腸管出血性大腸菌による集団感染の発生事例はなく、特に今回は、腸管出血性大腸菌の中でも比較的少ない血清群0145による市内で初めての集団発生事例となった。
概要:
平成25年8月17日市内医療機関より、管轄保健所に腸管出血性大腸菌0145感染患者1名の届出があった。
患者は市内の保育園に通園中の女児であり、患者家族および、患者が通園していた保育園の関係者に対して保健所が調査を行った。保育職員及び、同一フロアを使用していた園児を中心とした接触者の検便検体が採取され、川崎市健康安全研究所において検査を行った結果、8月22日に2名、8月25日に7名の検体からO145(VT1)が検出された。
接触者検便対象者をさらに拡大し、最終的には、保育職員38名、園児143名、感染者の家族45名について検査を行った結果、初発患者を含む23名の検体からO145(VT1)が検出された。菌保有者23名の内訳は1歳児クラス園児18名(うち有症者15名)、2歳児クラス園児2名(うち有症者1名)、4歳児クラス園児1名(有症者)及び接触者2名であった。有症者17名中15名が1歳児クラスの園児であり、有症者は発熱、下痢の症状を呈していた。分離されたO145菌株について、パルスフィールドゲル電気泳動法を行ったところ、ほぼ同じパターンを示した。
検食は保存されておらず、調理場等の拭き取り、献立表からの喫食調査、園児の行動調査等を行ったが菌は検出されず、原因を究明することはできなかった。症状の消失後も長期間にわたり保菌している園児もあり、本事例が終息するまでに2か月を要した。
原因究明:
検食は保存されておらず、調理場等の拭き取り、献立表からの喫食調査、園児の行動調査等を行ったが菌は検出されず、原因を究明することはできなかった。
診断:
なし
地研の対応:
地研の対応
川崎市健康安全研究所において、226名の検便を実施し、23検体の陽性を確認した。また、医療機関で分離された菌株1株を含む24株について、血清型別、毒素型別、薬剤感受性試験およびPFGEを実施した。
行政の対応:
管轄保健所は保育所に対して、施設の消毒を実施し、二次感染予防対策をとるよう指導した。事件が発生した後、本庁、保健所、健康安全研究所で対策会議を開き、情報の共有に努めた。
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
大規模集団発生事例の場合、調査方法の決定を迅速に行うためにも情報の共有が大切であることを痛感した。
現在の状況:
事件発生時においても検査機器等は、十分整備されており、特に困ることはなかった。
今後の課題:
医療機関との情報共有
長期陽性の無症状病原体保有者に対する対応
重症者が出た場合の対策
問題点:
なし
関連資料:
なし