[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/08
最終更新日:2016/05/27
衛研名:大分県衛生環境研究センター
発生地域:大分県
事例発生日:2013年9月15日
事例終息日:2013年9月23日
発生規模:喫食者数846名(750食提供)
患者被害報告数:396名
死亡者数:0名
原因物質:ナグビブリオ
キーワード:食中毒、ナグビブリオ、敬老会、ニシ貝
背景:
概要:
2013年9月17日9時15分、大分県K市内の医療機関から敬老会の仕出し弁当を食べた人が下痢などの食中毒様症状を呈している旨の届出があり、管轄保健所が直ちに調査を開始した。調査の結果、9月15日、16日に開催された敬老会において11地区で提供された仕出し弁当750食を、一部の人は自宅へ持ち帰り、計846名が摂食し、そのうち396名が下痢、腹痛などの食中毒様症状を呈していることが判明した。潜伏時間は6時間から48時間、平均26.6時間であった。
原因究明:
患者便7検体中6検体からV. choleraeが検出され、うち1検体は、同時にSalmonella Mbandaka(O7:z10:e, n, z15)が検出された。同検体については菌分離には至らなかったもののST遺伝子(毒素原性大腸菌)の存在も確認された。増菌培養液からV. choleraeおよびコレラ菌関連遺伝子(O1、O139、CT)のマルチプレックスPCRスクリーニングを実施した結果、V. choleraeの特異的な遺伝子の保有は確認されたが、O1、O139、CT遺伝子の保有は認められなかった。確認のため、生化学的性状からV. choleraeと同定された分離株について、コレラ菌免疫血清O1混合血清、ビブリオコレラ免疫血清O139“Bengal”の凝集反応を実施したが、ともに凝集は認められず、CT遺伝子も保有していなかった。したがって、V. cholera non O1&non O139(以下、ナグビブリオ)による食中毒と判断された。食品検査の結果、ニシ貝のみからV. choleraeが検出され、患者便から検出された当該菌と同様、ナグビブリオと同定された。
国立感染症研究所の検査の結果、患者便由来株はV. cholera O144、ニシ貝由来株はV. choleraeO49、OUTと判明し、遺伝子型もそれぞれに異なっていた。しかし、その後、仕出し屋に冷凍保管されていた同一ロットのニシ貝スライスの検査を実施した結果、V. choleraeが検出され、ナグビブリオと同定されたため、感染研に菌株を追加送付した。送付菌株のうち、数株が患者便由来株と同じ血清型V. choleraeO144で、遺伝子型も同一パターンを示した。
診断:
地研の対応:
患者便7検体について、定法に従って下痢起因菌の検索を実施した。患者便からナグビブリオが検出されたため、直ちに検食(残品の仕出し弁当)について、V. choleraeの汚染状況の検査を開始した。V. cholerae以外の好塩菌の増殖を抑制するために、低いNaCl濃度のアルカリペプトン水で一次増菌後、短い培養時間で二次増菌への植え継ぎするなど選択増菌への工夫を行った。また、本事例において分離されたV. choleraeの特徴として、TCBS寒天平板上には白糖分解の2mm程度大の黄色コロニーを形成するものの、クロモアガービブリオ寒天平板の20時間培養では、V. choleraeに特徴的な「青みどり」の発色が認められず、V. choleraeではないと誤判断されるような発育状況であった。
行政の対応:
当該施設に対し、平成25年9月19日から同年9月20日までの2日間の営業停止、施設改善を命令するとともに、加工施設を有するN県への情報提供を行った。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
患者便とニシ貝から検出された菌株について、血清型や遺伝子型などの詳細な検査を国立感染症研究所に依頼した。
事例の教訓・反省:
現在の状況:
今後の課題:
回収漏れ製品から第2の食中毒事件(平成25年10月17日、大分県BT市にて)が発生し、ロット管理の曖昧さが指摘された。ニシ貝スライスの原材料となったニシ貝はメキシコ産で、産地工場にてむきみの状態から内臓を除去、水洗しブランチング後、包装、凍結、梱包されていた。ニシ貝仕入れ後、珍味への加工段階での加熱不足や消毒不十分により、除去できなかった病原菌が味付け加工段階、輸送流通時や提供時の温度管理の不備により、発症菌量にまで増殖したと考えられる。いわゆる冷凍食品ではない、冷凍で流通する食品には規格基準がない。今後、冷凍で流通する食品の安全確保に向けた取り組みの必要性を感じた。
問題点:
関連資料: