[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/05/13
最終更新日:2016/05/27
衛研名:北海道立衛生研究所
発生地域:北海道岩見沢市
事例発生日:2014年10月5日
事例終息日:2014年10月5日
発生規模:摂食者3名(1名救急搬送)
患者被害報告数:3名
死亡者数:0名
原因物質:イボテン酸、ムッシモール等
キーワード:テングタケ属、イボテン酸、ムッシモール
背景:
テングタケ、イボテングタケ等のテングタケ類は、夏から秋に針葉樹林や広葉樹林地上に発生する毒キノコであり、毒成分はイボテン酸及びムッシモール等で、腹痛、嘔吐、下痢、幻覚等を引き起こす。北海道内では、平成20年~26年に毒キノコによる食中毒が21件発生しており、そのうちの10件がテングタケ類によるものであった。
概要:
市内に自生していたキノコを採取し、知人2名と油炒めにして摂食したところ、うち1名が腹痛、嘔吐、意識障害を呈し、同市内の医療機関に救急搬送され、他の2名も嗜眠の症状を呈した。保健所がキノコ採取場所周辺を調査したところ、当該キノコの根部(基部)が確保された。さらに、聞き取りから原因はテングタケ属のキノコと疑われた。北海道立衛生研究所が確保された基部を検査した結果、テングタケに含まれる毒成分が検出されたこと等から、原因食品はテングタケの一種と推定、公表した。
原因究明:
搬入された当該3試料について、1.5%TFA/アセトニトリル混液で抽出し、逆相系及び強陽イオン交換ミニカラムにより精製し、HPLCで分析したところ、テングタケ類の毒成分として知られるイボテン酸を600~2,530 μg/g、ムッシモールをtrace~84 μg/gの濃度で検出した。患者の症状がテングタケ類を摂食したことによる中毒症状と一致することから、テングタケの一種を原因食品とする食中毒とされた。
診断:
地研の対応:
岩見沢保健所が確保した当該キノコの基部を北海道食品衛生課の依頼により、北海道立衛生研究所が鑑定した。
行政の対応:
地研間の連携:
なし
国及び国研等との連携:
なし
事例の教訓・反省:
食中毒発生後、保健所がキノコ採取場所周辺を調査し、当該キノコの根部(基部)を確保することが出来た。調理品残品が無い場合においても、試料採取場所で当該品の一部を確保し、毒成分を分析することにより原因究明が可能となる場合があることから、試料採取場所についても速やかに調査する必要があると考えられた。
道内においては平成20年~26年の7年間で21件の毒キノコによる食中毒が発生していることから、ホームページによる毒キノコに関する注意喚起や食用キノコとそれに類する毒キノコの見分け方を写真入りで解説した「野や山のきのこハンドブック(北海道及び札幌市作成)」をイベント会場で配布するなど、毒キノコについても啓発活動する必要がある。
現在の状況:
北海道立衛生研究所では有毒植物による食中毒を防止する啓発活動として、北海道健康安全局食品衛生課及び札幌市保健所と「春の山菜展」を共催している。更に、道内において有毒植物や毒キノコによる食中毒が毎年発生していることから、それらの化学的鑑定を可能とするため、毒成分分析に関する研究にも取り組んでいる。
今後の課題:
道内で植物性自然毒による食中毒が発生した際に、より簡便で迅速な化学的鑑定が出来るようにMS/MS等による分析法を検討する。
問題点:
関連資料:
1)佐藤正幸, 姉帯正樹:道衛研所報,64, 27-33(2014)
2)藤本啓,佐藤正幸,内山康裕:道衛研所報,65, (2015)印刷中