[ 詳細報告 ]
分野名:その他
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:福岡県保健環境研究所
発生地域:福岡県筑紫野市平等寺
事例発生日:1999年10月6日
事例終息日:
発生規模:
患者被害報告数:被害者数4名
死亡者数:3名
原因物質:硫化水素(H2S)
キーワード:硫化水素、安定型処分場、浸出水、急性中毒、硫酸第一鉄(FeSO4)、雨水分離、ガス抜き、酢酸亜鉛
背景:
事故数年前から硫化水素ガスによる悪臭などの情報や地元からの産廃処分場対策の陳情もあり、行政は水質検査や環境保全対策の指導を行っていた。
概要:
安定型処分場であるが、浸出水集水管を付設しており、水処理施設も設置予定の対策途中での事故であった。事故は、作業員が採水のため浸出水集水管が接続されたピット(深さ×縦×横=5×1.2×1.5m)の中に梯子で降り底部に溜まった硫化水素ガスで中毒したものである。
原因究明:
ピット内の浸出水から硫化水素25.7ppmが検出されたことから、硫化水素発生、原因究明が開始された。
1)処分場内ボーリング調査 :12本のボーリングを行い、コア及び浸出水等の分析
2)環境影響調査 :河川、民家井戸水
硫化水素発生原因は、複数の要因が重なり地下環境が還元的となり硫酸還元菌が増殖した結果と考えられた。中でも硫化水素ガスの除去のため散布した硫酸第一鉄の要因が注目された。
周辺環境影響調査では有害物質による影響は否定されたが、電気伝導率から塩の流出が危惧された。
診断:
地研の対応:
事故当日、保健所から連絡を受け直ちに現場に急行した。容易に、硫化水素ガスが事故原因と判明したためピット内外の硫化水素ガスを検知管で測定した。さらに、翌日ピットの深さ別、処分場敷地境界の硫化水素ガス調査、さらにはピットに溜まった浸出水を採取した。
行政の対応:
「筑紫野の産廃処分場事故調査委員会」の設置:硫化水素発生原因究明、周辺環境影響並びに改善方策等の検討を目的に設置された。
地研間の連携:
国及び国研等との連携:
国において「廃棄物最終処分場における硫化水素対策検討会」設置。当面の対策を国が通知した。
事例の教訓・反省:
現在の状況:
降雨の地下浸透防止のため雨水分離施設の設置。さらに地下環境を好気的にするため、埋立て層内の硫化水素等ガス抜き取り後、酢酸亜鉛等処理を実施中。
今後の課題:
最終処分場における硫化水素発生の問題は、法的には悪臭の観点から規制されてきており、規制のあり方についても検討すべきである。また、ピット内など密閉空間の作業は、労働安全衛生の観点からもその危険性を周知しておく必要がある。
問題点:
関連資料: