No.1164 セレウス菌(嘔吐型)による食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:細菌性食中毒
登録日:2016/03/11
最終更新日:2016/05/27
衛研名:千葉市環境保健研究所
発生地域:千葉市内中学校・高等学校
事例発生日:2004年9月12日
事例終息日:2004年9月14日
発生規模:患者数25名 死亡者数0名
患者被害報告数:35名
死亡者数:0名
原因物質:セレウス菌(嘔吐型)
キーワード:セレウス菌、嘔吐毒、セレウリド

背景:
厚生省は、1982年にセレウス菌を食中毒の原因菌として追加指定し、1983年の食中毒統計から病因物質として記載されるようになった。1983年から1999年までの17年間における発生数や患者数はいずれも1%程度を占めるにすぎない。2004年9月に市内の中学校・高等学校においてわが市では初めてと思われるセレウス菌による嘔吐型集団食中毒が発生した。

概要:
2004年9月12日午後2時45分、医師から市内中学校・高等学校の文化祭で焼きソバを喫食し、嘔吐等の食中毒症状を呈して救急車で搬送された患者3名を診察した旨の通報が保健所にあった。保健所が調査したところ、患者に共通する行動、喫食状況は9月12日に文化祭に参加し、同日に学内で販売された食事を喫食していることが判明した。学生は食品の調理・販売には関わらず、学校内の食品取り扱い業務全般は管理会社が委託されていた。管理会社は4つの業者から食品を仕入れ、学校内の食堂・校庭にて販売していた。食中毒菌検索の結果、残品の焼きソバから患者由来株と同一の嘔吐毒遺伝子(+)のセレウス菌が検出された。

原因究明:
検査の結果、焼きソバ残品1検体と患者便6検体から嘔吐毒(セレウリド)遺伝子(+)のセレウス菌が検出された。焼きソバの汚染菌数は1.6×103cfu/gであり、これら分離菌のPFGEパターンは同一であった。過日、東京都健康安全研究センターによるH血清型別検査の結果、全てGilbert 1であることが確認された。以上のことから、焼きソバを原因食品、本菌を病因物質と決定した。
また、保健所の調査の結果、以下の点が判明した。
当該日の焼きソバの製造量は3名で250食と、通常の処理能力(普段は1名で約15食)を超えており、原材料は保冷庫に収まらない状況であった。調理場は、汚染・非汚染区域が明確に区分されてない作業環境であり、原材料下処理時の汚染除去が徹底されない状況で調理を行っていた。さらに、製造後の焼きソバについては、放冷不足のままパック詰めされ、狭い調理場内で保管された。なお、当日の最高気温は例年より高く29.7℃であった。これらの要因が食品中での原因菌の増殖、毒素の産生に関与したものと考えられた。

診断:

地研の対応:
保健所からの依頼により、3箇所の製造施設の拭き取り22検体、食品残品2検体、調理従事者便11検体、患者便16検体について食中毒菌検索を実施した。

行政の対応:
原因施設を3日間の食品営業停止処分とし、管理会社に対しては、文化祭などの場合に特に注意すべき点について衛生指導を実施した。

地研間の連携:
東京都健康安全研究センターに分離されたセレウス菌のH血清型別試験を依頼し、原因菌の血清型がGilbert 1であることを確認した。

国及び国研等との連携:

事例の教訓・反省:

現在の状況:
特になし

今後の課題:
近年、LC/MS分析法により、食品中から直接セレウリドを検出・定量することが可能となった。ヒトに対する発症毒素量を推定することは重要であるが、分析法の検査技術の確保を必要とする。

問題点:

関連資料: