◆「あさコラム」vol.10:「孤島の太陽」(2016年6月24日)

参照元URL : http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=222659

「感染症エクスプレス@厚労省」は、主に医療従事者の皆さまに向け、感染症についての通知・事務連絡・報道発表など、平時はもちろん有事にも役立つ情報を直接ご提供するメールマガジンです。
本ページでは現在連載中の、健康局結核感染症課の浅沼一成課長によるコラムを掲載しています。
「感染症エクスプレス@厚労省」は無料で登録いただけます。感染症に関心のある方はぜひご活用ください。
http://kansenshomerumaga.mhlw.go.jp/

◆「あさコラム」vol.10:「孤島の太陽」(2016年6月24日)

◆「あさコラム」vol.10 「孤島の太陽」

こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

早いもので本コラムも連載10回目となりました。
思いがけなく大きな反響をいただき、身が引き締まる思いです。
在任中は可能な限り、さまざまな話題を随時綴ってまいります。
これからもどうぞよろしくお願いします。

さて、このたびの九州での記録的豪雨で被害に遭われた皆様に
おかれましては、心よりお見舞い申し上げます。
当初はカラ梅雨ではないかと思われた今年の梅雨ですが、最近は
日本各地で雨に見舞われています。
これだけ雨が続くと、太陽の日差しが恋しくなりますね。
そこで、今回は「孤島の太陽」という映画を紹介いたします。

私事ですが、2000年から10年余り「月刊公衆衛生情報」という
専門誌に、映画コラムを連載していたことがありました。
公衆衛生や厚生労働行政に関係の深い映画を紹介していくという
内容なのですが、上司だった谷口 隆さん(現:大阪府吹田保健所長)
から題材としてご紹介頂いた映画がこの「孤島の太陽」です。

「孤島の太陽」は、高知県・沖の島の駐在保健婦を主人公にした
1968年の日本映画です。
主演は当時、絶大な人気を誇っていた樫山 文枝さん。
ずいぶんと昔の映画ですが、主人公の荒木 初子さんは、実は、
保健衛生の普及および向上に貢献され、沖の島のフィラリア対策に
尽力を果たした実在の保健師さんなのです。

フィラリアは蚊を媒介する感染症で、荒木さんが赴任した当時は、
沖の島で猛威をふるっていました。
当然ながらフィラリアで死亡する方も多く、沖の島の保健衛生上
の重要課題の一つになっていました。

そこで荒木さんは毎日のように、島民宅を訪問したり、婦人会に
出席するなど、蚊の駆除の重要性を説いて回っていたとのこと。
蚊の幼虫駆除のため、墓地の花筒の水を捨てるなど、島民の反発
を受けながらも、徹底的に蚊の駆除を進めていました。

そして、映画のシーンにもありますが、長崎大学熱帯医学研究所
の支援のもと、フィラリアの全島一斉検診として、深夜の採血活動にも
積極的に取組んでおられました。
こうした荒木さんの取り組みと、フィラリア治療薬の普及のおかげで、
1960年代後半には、沖の島からフィラリアをなくすことができたのです。

この功績を讃えようと、荒木さんの生誕百年に先立ち、島民や、
出身者らで作る「保健婦初子の会」によって、昨年、顕彰像が沖の島
の公園に建立されました。
奇しくも今年は、中南米で流行したジカ熱対策などのため、皆さん
にも蚊の駆除をお願いしているところ。
天国の荒木さんに激励して頂きながら、私たちも蚊対策に努めて
まいります。
では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<参考:「孤島の太陽」(日活HP)>
http://www.nikkatsu.com/movie/21088.html

<参考:荒木初子顕彰像(沖の島観光協会HP)>
http://www.oki-shin.com/topix.htm

<本コラムの感想、ご質問、ご要望など>
http://kansenshomerumaga.mhlw.go.jp/

⇒「メルマガの内容に関するお問合せ」をクリックするとメール作成画面が立ち上がります。
<バックナンバー>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116724.html

公開日:2016年06月29日

カテゴリー: 感染症