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本ページでは現在連載中の、健康局結核感染症課の浅沼一成課長によるコラムを掲載しています。
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◆「あさコラム」vol.18「この横浜にまさるあらめや」(2016年8月26日)
こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
各地で麻しんの流行の兆しが散見されています。
ワクチンの接種歴がない方が海外渡航先で感染してくる輸入症例がきっかけで、各所で免疫がない方が感染する・・・というパターンです。一つ二つのイベントで感染が拡大しているだけではなさそうなので、全国各地、広く留意が必要です。
わが国は排除状態となっている麻しんですが、感染力が強く、合併症の心配もあり、未だ予断は許せません。
その対策としては、
・「麻しんとはどのような感染症か」という啓発普及(感染力が強いため、発疹が出たら人混みにいかず、早く受診する。)
・麻しん予防接種の接種率の向上
・海外渡航者に向けた啓発普及(未接種者への予防接種、渡航先の流行状況の確認する。など)
・医療機関への受診の仕方の啓発(発熱と発疹が出たら、受診前に連絡して医療機関にかかる。医療機関での感染を防ぐためにも重要。)
など、地道な取り組みが必要です。
皆様のご支援とご協力、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、去る8月20日、横浜検疫所施設公開に行ってまいりました。
お天気に恵まれず雨の中での施設公開になりましたが、それでも400名以上の方にお越し頂いたとのこと。
その関心の高さに驚いてます。
私も久々に横浜検疫所の施設を訪れましたが、港湾衛生や輸入食品における検査で用いられる最新の検査機器が整備されていて、隔世の感でした。
横浜検疫所は明治28年に長濱検疫所として開設された歴史のある検疫所で、かつては野口英世博士が検疫医官補として赴任していた検疫所です。
ちなみに、明治32年、野口検疫医官補は横浜港に入港した豪華客船・亜米利加丸の船員からペスト菌を検出、日本の検疫業務の実力を世界に示したと言われています。
当時の検疫所の面影を残す施設は
・1号停留所
・細菌検査室
・事務棟
の3棟なのですが、このうち、細菌検査室と事務棟は隣接する長浜野口記念公園の施設として現存し、常時公開されています。(野口英世細菌検査室保存会の皆様の活動のおかげで、施設が維持されています)
唯一、1号停留所だけは現在の横浜検疫所内の敷地にあり、この施設公開でなければ観ることができません。
この日、横浜検疫所の木村博承所長にご案内頂き、1号停留所を見学してきました。
この停留所は明治28年に創建。大正12年の関東大震災で壊滅しましたが、何と翌年にはほぼ復旧したとのことで、当時の検疫の重要性について垣間見ることができました。
停留所に入ると、右手には明治の香りが漂う食堂があります。
「この洋食器を見て下さい!明治にここまでの洋食器を揃えていたのは凄いことなんです!」と力説する木村所長。
そのココロは、世界各地から入港する客船等に乗船していた方々を停留するに当たり、食事が大事ということで、当時としては珍しい洋食を提供できるようになっていたのだそうです。
当時は日本に数名しかいなかった洋食のコックさんが、検疫所に勤務していたとか。まさに「おもてなしの心」ですね。
「人権に配慮した停留所だったんです」と、木村所長談。
停留のための各部室は二人部屋になっていますが、そこには顕微鏡などの当時の医療器具やベッドや木製の簡易洋式便器などが展示されていました。
ベットには天井から蚊帳がつるされており、当時から蚊媒介感染症の拡大防止の基本がなされていたと再認識。
また、当時の防護服も展示してありました。
素材こそ現在の化学繊維とは違いますが、まるで潜水服のような防護服のコンセプトは、今の防護服と何ら変わらないものです。
談話室には、後藤新平の書が掲げられ、優雅なソファーやテーブル、骨董品と見間違うかの貴重な蓄音機やレコードまでがあり、明治の趣あふれる造りになっています。
短歌集会も行われていた記録もあり、かの有名な与謝野晶子女史も与謝野鉄幹氏とともに来所された記録がありました。
「されば港の数多かれど この横浜にまさるあらめや」
横浜市歌の歌詞のとおり、今も昔も横浜港はわが国を代表する港。
その横浜港で、今も昔も変わらない感染症の脅威に挑む横浜検疫所にはこのような歴史遺産があることを、皆様にも知って頂きたいと思います。
1号停留所、わが国の感染症対策の歴史を知るための貴重な施設です。
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<バックナンバー>
1号停留所
1号停留所の前にて
談話室
蚊帳がかかっているベッド