No.1608 石垣島内複数の保育所等で発生したA群ロタウイルスによる集団感染性胃腸炎事例-沖縄県

[ 詳細報告 ]
分野名:ウイルス性感染症
登録日:2016/09/07
最終更新日:2016/09/07
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:沖縄県石垣島
事例発生日:2013年5月
事例終息日:2013年7月
発生規模:石垣島内にある保育所および児童館等の放課後児童が利用する施設のうち、半数以上で発生
患者被害報告数:220名
死亡者数:0名
原因物質:A群ロタウイルス
キーワード:感染性胃腸炎、A群ロタウイルス、保育所、G1P[8]型

背景:
A群ロタウイルス(RVA)は小児の感染性胃腸炎の主要な病原体であり、非常に感染力の強いウイルスである。RVAによる小児の重症化や成人の集団感染性胃腸炎も報告されている。2013年、八重山保健所管内の小児科定点から報告される感染性胃腸炎患者は第19週(5/6~5/12)までは各週10名以下であったが、第20週(5/13~5/19)に患者報告数が急増し、第20~31週(5/13~8/4)の間に220名の患者が報告された。医療機関における簡易キットによる迅速検査で小児患者がRVA陽性を示したことから、本事例は、沖縄県ではこれまで経験したことがない大規模のRVA集団感染であると示唆された。

概要:
2013年5月14日に沖縄県八重山保健所は、石垣島内の1箇所の保育所から10名以上の集団感染性胃腸炎が発生していると報告を受けた。さらに24日までに2箇所の保育所から同様の報告を受けた。八重山保健所と石垣市による胃腸炎発症者数調査の結果、5月1日~7月13日までに島内の半数以上の保育所および児童館等の放課後児童が利用する施設(保育所等)で感染性胃腸炎が発生したこととなり、そのうち9箇所の保育所等では10名以上の集団感染となった。また小児28名が入院、そのうち2名が脳症を発症した。流行の中心は1~2歳であったが、一部では保育所等職員や児童の父母への感染も報告された。八重山保健所管内の感染性胃腸炎患者報告数は第29週(7/15~7/21)以降、各週1名以下となり、本事例はほぼ終息した。

原因究明:
医療機関への聞き取りにより簡易キットによる迅速検査で小児患者がRVA陽性を示しているとの情報を得たことから、本事例はRVAによる集団感染性胃腸炎と考えられた。

診断:
医療機関における簡易キットによりRVA陽性と診断された患者便について、RT-PCR法によるRVAの検出を実施した

地研の対応:
沖縄県衛生環境研究所において、医療機関における簡易キットによりRVA陽性と診断された小児5名および大人1名、計6名の患者便について、VP7およびVP4遺伝子を標的としたプライマーを用いてRT-PCR法によるRVAの検出を実施したところ、患者6名(100%)からいずれの遺伝子も検出された。そのうち小児3名と大人1名から得られたVP7、VP4遺伝子のPCR産物の塩基配列をダイレクトシークエンス法により決定したところ、いずれもG1P[8]型に遺伝子型別された。

行政の対応:
八重山保健所は初めに報告を受けた3保育所への感染対策の指導を行うと同時に、6月4日に石垣市と共に島内全保育所等を対象とした胃腸炎発症者数調査を行った。その後6月13日に保健所管内の保育所等施設長を対象に衛生講習会を実施するとともに、胃腸炎発症者数調査を継続した。衛生講習会が開催された第24週(6/10~6/16)から患者数の減少がみられることから、衛生講習会が感染拡大防止に寄与したことが考えられた。

地研間の連携:
なし

国及び国研等との連携:
なし

事例の教訓・反省:
八重山保健所は感染性胃腸炎発生のあった複数の保育所等間の児童や家族が接触する場として共通のものがなかったか調査したが、感染を拡大させた要因として明確なものは見出せなかった。沖縄県内のRVA流行状況は不明な点が多く、本事例が島内で既に流行していた株が保育所等に持ち込まれたことにより発生したのか、島外から持ち込まれた株により発生したのかは不明である。それを明らかにするためには、継続した患者および病原体サーベイランスが重要と考えられた。

現在の状況:
今回の事例以降、大規模な感染性胃腸炎の集団発生は起きていない。

今後の課題:
2011年より国内でもRVAワクチンが発売され、ワクチン接種による患者発生状況や流行株の変遷などには注視する必要がある。

問題点:
なし

関連資料: