No.1609 キダチチョウセンアサガオが混入したお茶による食中毒

[ 詳細報告 ]
分野名:自然毒等による食中毒
登録日:2016/09/07
最終更新日:2016/09/07
衛研名:沖縄県衛生環境研究所
発生地域:札幌市
事例発生日:2012年12月
事例終息日:
発生規模:摂食者2名
患者被害報告数:発症者 2名
死亡者数:0名
原因物質:スコポラミン
キーワード:キダチチョウセンアサガオ、スコポラミン、野草茶

背景:
石垣市内で製造販売された野草茶により、札幌市在住者が食中毒となった。

概要:
2012年12月7日,札幌市の夫婦が,家庭で昼食を喫食したところ,意識混濁,不穏状態,徘徊等の症状を呈し,病院に緊急搬送された.
札幌市の調査により,この夫婦が石垣市で購入した野草茶を飲んだことが判明し,その茶葉からスコポラミンが検出されたと本県に連絡があった.管轄保健所が製造所を調査したところ,自宅菜園にて数種類の植物を栽培し,その植物の葉を乾燥して「野草茶」として販売していこと、製造者の家族がその菜園内でキダチチョウセンアサガオを植えていたことが判明した.

原因究明:
患者が発症日に喫飲した製品から、スコポラミンが1.20 mg/g検出され、茶葉製造所から 収去した1製品から、スコポラミンが12.2 µg/g検出された。
キダチチョウセンアサガオの葉の乾燥品と収去品中の葉を比較したところ、収去品中にキダチチョウセンアサガオの葉が混入していることを確認した。

診断:
患者が発症日に喫飲した茶製品から高濃度のスコポラミンが検出されたこと、茶葉製造所でキダチチョウセンアサガオの葉が混入したことが疑われたことから、キダチチョウセンアサガオによるスコポラミン中毒とされた。

地研の対応:
患者が喫飲した2製品については札幌市衛生研究所が、茶葉製造所からの収去品2製品については当所が、LC-MS/MSによるスコポラミン、アトロピンの分析を行った。
また、当所において、茶葉製造所菜園のキダチチョウセンアサガオの葉と茶製品の葉の比較を行った。

行政の対応:
沖縄県生活衛生課及び管轄保健所は、札幌市からの通報を受け、直ちに茶葉製造所の調査を開始した。
管轄保健所は、札幌市の調査により、原因食品である野草茶からスコポラミンが検出されたこと、当該野草茶製造所の菜園において、本来の原料植物とキダチチョウセンアサガオを混植していたことを確認したことから、食品衛生法第6条違反として同法第54条第1項に基づき、当該野草茶の回収命令、廃棄命令、その他の措置を行った。また、県生活衛生課は、食中毒発生と回収命令について、報道発表し、注意喚起を行った。

地研間の連携:
札幌市衛生研究所との検体及び分析等について、情報交換を行った。

国及び国研等との連携:
特になし

事例の教訓・反省:
混入の原因となったキダチチョウセンアサガオは、製造者の家族が植えていたものであった。製造者自身は、キダチチョウセンアサガオに薬効があり、古くから医薬品として使われていることから食しても問題ないとの認識から、野草茶の原料採取時に多少の混獲があっても、除去するなどの注意をしておらず、野草に関する基本的知識の欠如が原因と考えられた。
また、製造者は、茶葉製品に食品衛生法等必要な表示をせず、安易に製造販売しており、関係法令の認識も低かった。

現在の状況:
特になし

今後の課題:
一般に対する植物性自然毒食中毒の予防の普及啓発、農産物の一次加工品製造者に対する指導の充実を図る必要がある。

問題点:

関連資料: