参照元URL : https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
麻しんとは
麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。
麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。
発生状況
麻しんは毎年春から初夏にかけて流行が見られます。過去の推移を見ると、平成19・20年に10〜20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10〜20代の患者数は激減しました。患者発生の中心は0〜1歳となった一方で、20歳以上の成人例の割合も増加しています。
また平成22年11月以降のウイルス分離・検出状況については、海外由来型のみ認めており、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は認めておりません。
平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。しかし、その後も海外からの輸入例を発端として、集団発生事例は起こっています。麻しんの感染症発生動向調査に基づく最新発生報告数は、定期的に国立感染症研究所ウェブサイトに掲載されます。また麻しんに関する情報は、国立感染症研究所感染症疫学センターのウェブサイトで確認することができます。
かかった場合
感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2〜3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人と言われています。
その他の合併症として、10万人に1人程度と頻度は高くないものの、麻しんウイルスに感染後、特に学童期に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患を発症することもあります。
近年は麻しん含有ワクチンの2回接種が行われ、麻しんに感染する方の人数は減っています。
ワクチンについて
麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻しんの予防接種が最も有効な予防法といえます。また、麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの接種をすることも効果的であると考えられています。接触後5、6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えることができる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、かかりつけの医師とご相談ください。また、定期接種の対象者だけではなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、麻しんの罹患歴や予防接種歴が明らかでない場合は予防接種を検討してください。
麻しん含有ワクチン(主に接種されているのは、麻しん風しん混合ワクチン)を接種することによって、95%以上の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった方の多くに免疫をつけることができます。さらに、接種後年数の経過と共に、免疫が低下してきた人に対しては、2回目のワクチンを受けることで免疫を増強させる効果があります。2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まり、2008年度から2012年度の5年間に限り、中学1年生と高校3年生相当年齢の人に2回目のワクチンが定期接種として導入されていました。
1回目のワクチン接種後の反応として最も多く見られるのは発熱です。接種後1週間前後に最も頻度が高いですが、接種して2週間以内に発熱を認める人が約13%います。その他には、接種後1週間前後に発しんを認める人が数%います。アレルギー反応としてじんま疹を認めた方が約3%、また発熱に伴うけいれんが約0.3%に見られます。2回目の接種では接種局所の反応が見られる場合がありますが、発熱、発しんの頻度は極めて低いのが現状です。稀な副反応として、脳炎・脳症が100万〜150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。
なお、麻しん含有ワクチンは、ニワトリの胚細胞を用いて製造されており、卵そのものを使っていないため卵アレルギーによるアレルギー反応の心配はほとんどないとされています。しかし、重度のアレルギー(アナフィラキシー反応の既往のある人など)のある方は、ワクチンに含まれるその他の成分によるアレルギー反応が生ずる可能性もあるので、接種時にかかりつけの医師に相談してください。
Q&A
Q.1 なぜ、平成19・20年に10代から20代の人を中心に流行したのですか?
A.1 かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。
10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいます。そのうえ、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人達が蓄積していたものと考えられています。
さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴って、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少しました。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいたことも原因の一つと考えられています。
Q.2 妊娠しているのですが麻しんの流行が心配です。どうしたらよいでしょうか?
A.2 妊娠中に麻しんにかかると流産や早産を起こす可能性があります。妊娠前であれば未接種・未罹患の場合、ワクチン接種を受けることを積極的に検討すべきですが、既に妊娠しているのであればワクチン接種を受けることが出来ませんので、麻しん流行時には外出を避け、人込みに近づかないようにするなどの注意が必要です。また、麻しん流行時に、同居者に麻しんにかかる可能性の高い方(例えば麻しんワクチンの2回接種を完了していない者で、医療従事者や教育関係者など麻しんウイルスに曝される可能性が高い者など)がおられる場合はワクチン接種等の対応について、かかりつけの医師にご相談ください。
Q.3 外国で麻しんになると大変なのですか?
A.3 特に麻しんの発生がない、あるいは非常に少ない国・地域では、滞在中に麻しんを発症すると、感染の拡大防止のため、発症した本人の移動制限だけでなく、同行者の移動も厳しく制限されることがあります。
Q.4 海外渡航に際して、麻しんについて注意すべきことはありますか?
A.4 南北アメリカ(輸入例とその関連)と多くの中東、ヨーロッパ諸国は、年間数例から2桁までの非常に少ない報告数にとどまっています。日本も2015年3月に世界保健機関(WHO)の西太平洋事務局から麻しんの排除状態と認定されました。その一方で依然として多数の患者の報告があるのは、主にアジア及びアフリカ諸国です。中でも、地図中に茶色でしめされた中国、インド、モンゴル、パキスタン、ナイジェリアなどからの報告数が特に多いです。
日本を含めたほとんどの先進国では、麻しん対策として麻しんを含むワクチン(主にMMR[麻しん・ムンプス・風しん]ワクチン)の2回接種法がとられています。こうした対策の結果、世界各国では麻しん排除を達成する国が増加しています。2016年9月27日、WHOは、南北アメリカ大陸を含むアメリカ地域が麻しんの排除状態であると宣言しました。
しかし、下図のように麻しんが多く発生している地域が、いまだに多くあることから、麻しんにかかった(検査で診断された)ことがない方が海外渡航される時には、あらかじめ麻しんの予防接種歴を確認し、麻しんの予防接種を2回受けていない場合、又は接種既往が不明の場合には予防接種を受けることをおすすめしています。
海外渡航に際しての参考資料
- 厚生労働省検疫所(FORTH) 麻しん風しんの流行状況(2016年4月時点)
- 原文(WHO)
- 外務省海外安全ホームページ
- 外務省たびレジ
- WHO Immunization, Vaccines, Biologicals measles (英語)
図:各国の麻しん報告数(2016年4月〜2016年9月)
- http://www.who.int/immunization/monitoring_surveillance/burden/vpd/surveillance_type/active/measles_monthlydata/en/
Q.5 過去に麻しんにかかったことがあるのですが予防接種を受けるべきでしょうか?
A.5 今まで麻しんにかかったことが確実である(検査で麻しんの感染が確認された場合)場合は、免疫を持っていると考えられることから、予防接種を受ける必要はありません。しかし、麻しんかどうか明らかでない場合はかかりつけの医師にご相談ください。たとえかかったことがある人がワクチン接種をしても副反応は増強しません。
もし、麻しん又は風しんの片方にかかったことがあっても、他方にはかかっていない場合、定期接種対象者は麻しん風しん混合ワクチンを定期の予防接種として受けることができます。
Q.6 ワクチン接種を受けた方が良いのはどのような人ですか?
A.6 定期接種の対象年齢の方々(1歳児、小学校入学前1年間の幼児)は、積極的勧奨の対象ですが、定期接種の時期にない方で、「麻しんにかかったことがなく、ワクチンを1回も受けたことのない方」は、かかりつけの医師にご相談ください。
平成2年4月2日以降に生まれた方は、定期接種として2回の麻しん含有ワクチンを受けることになりますが、それ以前に生まれた方は、1回のワクチン接種のみの場合が多いと思います。また特に医療従事者や学校関係者・保育福祉関係者など、麻しんにかかるリスクが高い方や麻しんにかかることで周りへの影響が大きい場合、流行国に渡航するような場合は、2回目の予防接種についてかかりつけの医師にご相談ください。
Q.7 麻しんの予防接種を受けるのに、単独の麻しんワクチンの替わりに、MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を接種しても健康への影響に問題ありませんか?
A.7 麻しんの予防対策としては、MRワクチンは単独ワクチンと同様の効果が期待されます。
また、麻しんワクチンの替わりにMRワクチンを接種しても、健康への影響に問題はありません。むしろ風しんの予防にもつながる利点があります。
ただし、MRワクチンは、生ワクチンという種類のワクチンですので、妊娠している女性は接種を受けることができません。また、妊娠されていない場合であっても、接種後2カ月程度の避妊が必要です。これは、おなかの中の赤ちゃんへの影響を出来るだけ避けるためです。
また、麻しんの単独ワクチン、風しんの単独ワクチンの接種に当たっても、妊娠している方は接種を受けることはできません。接種後2カ月程度、妊娠を避けるなど同様の注意が必要です。
リンク
- 国立感染症研究所 麻しん最新情報
- 厚生科学審議会
- 厚生労働省FORTH
- 外務省海外安全ホームページ
- 外務省たびレジ
ツール
麻しんのリーフレット1 [559KB]
麻しんのリーフレット2 [340KB]
指針・ガイドライン等
麻しんに関する特定感染症予防指針(平成19年12月28日厚生労働省告示第442号)[252KB]
都道府県における麻しん対策会議等に関するガイドライン[744KB]
学校における麻しん対策ガイドライン [2,065KB]
麻疹発生時対応ガイドライン〔第二版:暫定改訂版〕
医師による麻しん届出ガイドライン 第五版
医療機関での麻疹対応ガイドライン 第六版
通知・事務連絡など
2016年09月09日掲載 | 麻しんの広域的発生に伴う乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンの供給に係る対応について(事務連絡) [126KB] |
---|---|
2016年08月24日掲載 | 麻しんの広域的発生について(事務連絡) [76KB] |
2015年11月04日掲載 | 乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンの製造販売業者による自主回収への対応について(情報提供)(事務連絡) [61KB] |
2015年10月30日掲載 | 乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンの製造販売会社による自主回収への対応について(協力依頼)(通知) [379KB] |
2014年04月15日掲載 | 麻しん患者の増加について(情報提供及び協力依頼)(事務連絡) [1,851KB] |
2014年02月07日掲載 | 麻しん患者の増加について(事務連絡) [132KB] |
2010年11月11日掲載 | サイト内リンク 麻しんの検査診断について(通知) |