「平成27年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」を公表します

参照元URL : https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000146846.html

平成28年12月26日
【照会先】
医薬・生活衛生局
医薬品審査管理課
化学物質安全対策室
室   長 日下部 哲也 (内線:2421)
室長補佐 日 田   充  (内線:2910)
専 門 官  古 田  光 子 (内線:2426)
主   査  中 尾  祐 輔 (内線:2423)
(代表番号) 03(5253)1111
(直通番号) 03(3595)2298

報道関係者各位

 

 

「平成27年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」を公表します

 

厚生労働省は、本日、「平成27年度 家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」を公表します。

「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」は、モニター病院と公益財団法人 日本中毒情報センターからの情報をもとに、家庭用品などによる健康被害の情報を毎年とりまとめているもので、「皮膚障害」、「小児の誤飲事故」、「吸入事故等」に関する報告で構成されています。

今回は、「皮膚障害」では装飾品によるもの、「小児の誤飲事故」ではタバコによるもの、「吸入事故等」では殺虫剤によるものが最も多く報告されています(ポイント参照)。

 また、使用者や保護者へのアドバイスとして、原因と思われる製品の使用を中止して医療機関を受診すること、小児のいる家庭ではタバコの取り扱い・保管方法に注意することなどを挙げています。

【報告のポイント】
■皮膚障害
装飾品によるものが47件と最も多かった。
<使用者へのアドバイス>
症状が発現した場合には、原因製品の使用を中止し、医療機関を受診しましょう。■小児の誤飲事故
タバコによるものが63件と最も多かった。
<使用者へのアドバイス>
小児のいる家庭では、タバコの取り扱い・保管方法に注意し、 飲料の空き缶やペットボトルを灰皿代わりにしないようにしましょう。■ 吸入事故等
殺虫剤によるものが269件と 最も 多かった。
<使用者へのアドバイス>
使用上の注意をよく読み、正しく使用しましょう。

(別添)


平成27年度
家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告(概要)

 

 本制度は、モニター病院(皮膚科※1、小児科※2)の医師が家庭用品などによる健康被害と考えられる事例(皮膚障害、小児の誤飲事故)や、公益財団法人日本中毒情報センター※3が収集した家庭用品などによる吸入事故と考えられる事例について、それぞれ厚生労働省に報告する制度です。
平成27年度の報告件数は、合計1,621件(平成26年度1,528件)でした。

 ※1;全国8施設

 ※2;全国8施設

 ※3;化学物質等に起因する急性中毒等について、一般国民及び医療従事者等に対する啓発、情報提供等を行っている。

 それぞれの報告件数の詳細は以下のとおりです。(表)

表 平成27年度 家庭用品等による健康被害等のべ報告件数 (上位10品目及び総数)


(注)皮膚障害と小児の誤飲事故では、原因と推定される製品や発現した症状の種類が複数挙げられている事例があるため、報告件数と報告事例数は必ずしも一致しない。

なお、本製品の対象製品は、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」(昭和48年法律第112号)が対象とする家庭用品ではない製品(タバコ、医薬品、食品等)も一部含まれています。

1.家庭用品等に係る皮膚障害に関する報告

(1)報告の概要と考察
・報告事例総数は、134例(平成26年度96例)でした。
・最も多く報告された家庭用品の種類は、装飾品で47件(31.3%)でした。
・性別は、女性が109例(81.3%)と大半を占めました。
・皮膚障害の種類は、「アレルギー性接触皮膚炎」90件(64.7%)と「刺激性接触皮膚炎」37件(26.6%)がほとんどを占めました。
・パッチテストの結果では、ニッケル、コバルト、金にアレルギー反応を示した例が多く見られました。

家庭用品等を主な原因とする皮膚障害は、原因製品との接触によって発生する場合がほとんどです。製品を使用することによって、接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる製品の使用を極力避けましょう。また、早期に専門医を受診しましょう。

(2)主な報告事例

1) 1年3か月前にピアスを付ける。8か月前から、両耳が赤く痒い。ネックレスを付けると頚部が赤く痒い。腕時計を付けると左上肢が赤く痒い。
(装飾品;19歳 女性)(本文p.8, 事例1)

→ 金属で既往がある場合は、他の金属製品にも注意しましょう。

2) 時計バンドを革から金属製に変えた。10日後から接触部に痒み、紅斑、漿液性丘疹が見られた。(時計バンド(金属);28
歳 男性)
(本文p.10, 事例7)

→ 症状が発現した場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、別の素材を使用するように心がけましょう。

3) 8年前から手湿疹が見られ、1年前より調理の仕事で増悪し、5か月前から痒みが強く受診。手指、手背の角化、苔癖化亀裂。ゴム手袋を使用している。
(ゴム手袋;27歳 女性)(本文p.12, 事例2)
→ 手袋が体質に合わない場合は、別の素材を使用するように心がけましょう。

4) 5年前から、サーフィンを始め、全身のウェットスーツを着ると痒みのある粟粒大紅色丘疹が多発するようになった。下半身用のウェットスーツは材質が異なるため、生じるのは上半身のみであり,かつウェットスーツに触れないビキニの水着部分には発症しない。(スポーツ用品;45歳 女性)
(本文p.15, 事例9)

→ スポーツ用品に使用されている材質が原因となる場合もあり、体質に合わない場合は他の製品を使用しましょう。

 5) 7年前から、顔面、頚部、両前腕、大腿内側に瘙痒性紅斑が見られ、若干、浮腫が生じており、2週間前より再発した。
(工芸用レジン(接着剤);34歳 女性)(本文p.16, 事例12)

→レジンに直接触れることを避け、成分の揮発などにより顔などにも症状が見られることがあるので、よく換気しましょう。また、レジンは歯科材料でも使用されていることがあるので、症状が出たことがある場合は歯科治療の際に歯科医に伝えましょう。

  6) 数年前から、背部に掻痒感が見られ、受診1年前から、顔、頭皮、頚部に掻痒があり、6か月前から、大腿部に皮疹が見られる。(冷却マット;37歳 女性)(本文p.16, 事例13)
→ 
症状が発現した場合には、原因と思われる製品の使用を中止し、早期に医療機関を受診しましょう。

2.家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告

(1)報告の概要と考察
・報告事例総数は、286例(平成26年度357例)でした。
・最も多く報告された家庭用品などの種類は、タバコが63件(22.0%)と平成26年度に引き続き第1位となりました。
・誤飲した年齢は、6〜11か月が最も多く78例(27.3%)、次いで12〜17か月が51例(17.8%)、3〜5歳が50例(17.5%)
でした。

  ・入院・転院した事例が18例(平成26年度17例)、また、死亡事例が1例ありました

  ・発生した時刻と場所は、それぞれ最も多いのが午前12時と午後5〜9時152例(54.7%:発生時刻不明を除く報告事例数に対する割合)、居間180例でした。

 事故は家族が小児に注意を払っていても発生します。小児のいる家庭では、小児の目に付く  ところや手の届く範囲には、小児の口に入る大きさのものは置かないようにしましょう。

(2)主な報告事例
1) 午後7時に車内のドリンクホルダーに置いてあったコーヒーを飲んだ。コーヒーの中にタバコの吸い殻一本分が入っていた。本人がオエッと言っていた。(タバコの溶液;2歳1か月 女児)(本文p.25, 事例4)
→ 車内は狭い空間なので、子どもの手の届く場所に誤飲する可能性のあるものを置かないようにしましょう。

  2) 午前8時15分に女児が椅子を使って戸棚の上に置いてあった母のポーチを取り、中に入っていた解熱鎮痛薬をかじっていた。口の中で粉々になっていた。(医薬品;3歳8か月 女児)(本文p.26, 事例2)
→ 子どもが通常、取り出せないと思われる場所に保管していても誤飲が発生しているので、細心の注意を払い、家庭内にある薬は慎重に保管・管理しましょう。

  3) 人形から容易に取り外せる小さなおもちゃ(付属おしゃぶり、直径10mm)を口に入れていることに気付かず、食事を与えはじめて突然呼吸困難を発症した。(玩具;9か月 男児)(本文p.28,事例1)
→ 対象年齢を確認して、適切な大きさ、形状と素材の玩具を与えましょう。その際、対象年齢外の子どもが使用・誤飲する可能性があることも考えましょう

  4) 弟と家で新しいおもちゃで遊ぼうとして、おもちゃに入っていた電池を何気なく口に含んだところ、誤って飲み込んでしまった。特に症状はない。(ボタン電池;8歳2か月 女児)(本文p.31, 事例2)
→ ボタン電池は、消化管に穴があくおそれがあるので、子どもの目に付くところや手の届くところに放置しないように注意しましょう。また、ボタン電池を誤飲した場合には、時間が経つと取り出せなくおそれがあるため、直ちに受診しましょう。

  5) なめていた飴を詰まらせた。30分くらい泣いていて、その後、喉の違和感が続いたため受診した。(食品類;1歳7か月 男児)(本文p.33, 事例1)

  → 食品を小児等に与える際、保護者は食品の性状等にも十分に注意を払い、必要な場合には細かく刻んで与えるなど配慮しましょう。

  6) 洗濯前の洗濯用洗剤(パック型)をお菓子と間違え誤食した。(洗濯用洗剤(パック型);1歳8か月 女児)(本文p.34, 事例3)
→ 子どもの手の届くところには置かないようにし、使用後は必ずフタをしっかり閉めて、決まった置き場所にすぐ戻すよう習慣づけましょう。

3.家庭用品等に係る吸入事故等に関する報告

(1)報告の概要と考察

  ・総報告件数は、1,201件(平成26年度1,075件)でした。
・最も多く報告された家庭用品などの種類は、殺虫剤(医薬品・医薬部外品を含む。)で269件(22.4%)でした。
・年齢別では、9歳以下の子どもが最も多く448件(37.3%)でした。

  ・製品の形態では、スプレー式の製品が最も多く633件(52.7%)、次いで液体の製品が350件(29.1%)でした。

  ・発生した時間と場所は、それぞれ午前8時〜午後11時が総件数の約80%であり、家庭内が総件数の89.9%(1,080件)でした。

事故の発生状況をみると、使用方法・製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例や、わずかな注意で防ぐことができた事例も多数ありました。製品の使用前には注意書きをよく読み、正しい使用方法を守ることが重要です。

事故が発生した場合は、必要に応じて専門医の診療を受けるようにしましょう。

(2)主な報告事例

1) 器具にセットされたワンプッシュ式蚊取りを、ロックを解除したまま置いていた。子どもが1回ボタンを押して、自分の眼にかけてしまった。(殺虫剤;2歳 男児)(本文p.43, 事例4)
→ 子どもの手の届かない場所に保管するようにしましょう。使用しないときは、器具の噴射防止ロックをかけるようにしましょう。

2) 火災警報器用のカバーを1箇所付け忘れた状態で、くん煙剤の使用を開始した。火災警報器が鳴ったため、開始から数分後に入室し、カバーをかける間、数十秒間吸入した。(殺虫剤;48歳 女性)
(本文p.44, 事例7)
→ くん煙剤を使用する場合は、製品に付属している火災警報器カバーを使用するなど、事前の対策を念入りに行いましょう。

  3) ドアを閉めて換気をしたトイレでマスクせずに、便器に塩素系のトイレ用洗浄剤と酸性のトイレ用洗浄剤を注ぎ、こすったところ、すぐに強い臭いがした。すぐにその場を離れた。今回、知人に勧められた洗浄剤を、注意書きを確認せずに併用した。
(洗浄剤;42歳 男性)(本文p.47, 事例4)
→ 塩素系の洗浄剤と酸性物質を混合すると塩素ガスが発生し、吸入すると危険ですので、混合しないように注意しましょう。

 4)  室内に設置していた自動噴射型エアゾールを、子どもが覗き込んだ状態で1回噴射ボタンを押した。顔にかかり眼に入った。(芳香・消臭・脱臭剤;4歳 女児)(本文p.51, 事例2)
→ 自動噴射装置は、人が近くにいる時に突然噴射することがあるので、設置場所に注意しましょう。

 5)雨が降っていたので、閉め切った室内でマスクをせずにレインコート3着分にエアゾール式の防水剤を2本使用した。
(防水スプレー;70歳 女性)(本文p.52, 事例1)
→ 使用前に製品表示、特に「使用上の注意」をよく読んでから使用しましょう。また、使用に当たっては、マスクを着用する等の安全対策を確実に講じるとともに、必ず風通しの良い屋外で使用しましょう。また、周囲に人、特に子どもがいいことを確認してから、使用しましょう。

 6) ポンプ式スプレータイプの除菌剤を使用して、40分程度台所の掃除をしたところ、症状が出現したので、作業を中断した。(除菌剤;68歳 女性)(本文p.53, 事例1)
→ 使用上の注意をよく読み、適正な使用量、使用方法により使用しましょう。