RNテロ災害医療対応(患者対応者向け)
ここでは放射線災害の対応について紹介します。
フロー図内の各項目をタップすると、具体的な対応情報を表示します。
表8 放射性物質による内部被ばく時の選択薬剤 ページ上部に戻る
核種 | 物理学的特徴 | 直後の治療 | 用法・用量 | |
アメリシウム | アメリシウム-241 (Am-241) | 物理学的半減期: 432.2年 実効半減期:45年(骨) 放射線:α線、γ線 蓄積臓器:肝臓、肺、骨、骨髄 | 第一選択;Ca-DTPA 第二選択;Zn-DTPA | 1回1gを生食100mlで30分で1日1回静注 週5日連続投与 混合療法:1回目Ca-DTPA 1g、2回目以降Zn-DTPA 1gを4日間投与。その後超ウラン元素の排泄率の増加が見られなくなるまで1週間に2回(1回あたりZn-DTPA 1g)投与。 Ca-DTPAは妊娠または妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。Zn-DTPAは妊婦または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみに投与すること。 小児への投与は14mg/kg。0.5g/日を超えないこと。 |
セシウム | セシウム-134 (Cs-134) | 物理学的半減期:2.0648年 実効半減期:96日 放射線:β線、γ線 蓄積臓器:全身 | プルシアンブルー | 水とともに1回3gを1日3回 内服 妊婦または妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみに投与すること。 小児(2歳から12歳)への投与は、1回1gを1日3回(2歳で0.21g/kgから12歳で0.32g/kg) |
セシウム-137 (Cs-137) | 物理学的半減期:30.1671年 実効半減期:110日 放射線:β線、γ線 蓄積臓器:全身 |
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コバルト | コバルト-57 (Co-57) | 物理学的半減期:271.74日 実効半減期: 170日 放射線:電子、γ線 蓄積臓器:肝臓 | Ca-DTPA 消化管の汚染には、 硫酸マグネシウム、 水酸化アルミニウム、 硫酸バリウムを経口投与 | Ca-DTPAは1回1gを生食100mlで30分で1日1回静注 妊娠または妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。 小児への投与は、14mg/kg。0.5g/日を超えないこと。 |
コバルト-58 (Co-58) | 物理学的半減期:70.86日 実効半減期:65日 放射線:β線、γ線 蓄積臓器:肝臓 |
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コバルト-60 (Co-60) | 物理学的半減期:5.2713年 実効半減期:1.6年 放射線:β線、γ線 蓄積臓器:肝臓 |
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ヨウ素 | ヨウ素-125 (I-125) | 物理学的半減期:59.4日 実効半減期:53日 放射線:電子、X線 蓄積臓器:甲状腺 | ヨウ化カリウム 代替療法; ヨウ化ナトリウム、 ヨウ化マグネシウム (摂取後4時間以内のみ投与) | 成人ではヨウ化カリウムとして1回100mgを経口投与する。 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に投与し、原則として反復投与を避けること。本剤は胎盤関門を通過し、胎児の甲状腺腫及び甲状腺機能異常を起こすことがある。 妊娠後期に本剤を投与した妊婦より産まれた新生児には、甲状腺機能検査を実施し、甲状腺機能の低下を認めた場合には、甲状腺ホルモン補充療法等の適切な処置を行うこと。 |
ヨウ素-129 (I-129) | 物理学的半減期:1570万年 実効半減期:120日 放射線:β線、X線、γ線 蓄積臓器:甲状腺 |
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ヨウ素-131 (I-131) | 物理学的半減期:8.0207日 実効半減期:7.5日 放射線:β線、γ線 蓄積臓器:甲状腺 |
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プルトニウム | プルトニウム-238 (Pu-238) | 物理学的半減期:87.7年 実効半減期:50年 放射線:α線、X線、γ線蓄積臓器:骨、肝臓 | DTPA | アメリシウムの項目参照 |
プルトニウム-239 (Pu-239) | 物理学的半減期:24110年 実効半減期:50年 放射線:α線、X線、γ線 蓄積臓器:骨、肝臓 |
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プルトニウム-240 (Pu-240) | 物理学的半減期:6564年 実効半減期:50年 放射線:α線、X線、γ線 蓄積臓器:骨、肝臓 |
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ポロニウム | ポロニウム-210 (Po-210) | 物理学的半減期:138.376年 実効半減期:37日 放射線:α線 蓄積臓器:肝臓、脾臓、腎臓 | ジメルカプロール 消化管の汚染には、 硫酸マグネシウム、 水酸化アルミニウム、 硫酸バリウムを経口投与 | ジメルカプロール;2-3mg/kg筋注 4hr毎(初回は50mgを超えないこと)。3日以上の投与を行わないこと。 禁忌:妊婦、肝不全、腎不全 |
ストロンチウム | ストロンチウム-85 (Sr-85) | 物理学的半減期:64.853日 実効半減期:62日 放射線:γ線 蓄積臓器:骨 | 第一選択; 塩化アンモニウム グルコン酸カルシウム 第二選択; アルギン酸ナトリウム その他; 炭酸カルシウム、 リン酸カルシウム、 水酸化アルミニウム、 硫酸マグネシウム、 硫酸バリウム、 リン酸アルミニウム | ・塩化アンモニウム:1日6g(8時間ごとに2g)経口投与。代謝性アシドーシス、重度の腎機能障害、肝機能障害には禁忌。 ・グルコン酸カルシウム:1日6−10g経口投与、または、1日 2g/500ml(5%ブドウ糖液)を6日間静注。高カルシウム血症、高カルシウム尿症、変力薬の使用者、カルシウムに相乗効果をもたらす薬剤の使用者には禁忌。 ・アルギン酸ナトリウム:1日1回10g経口投与、または、1日2回 1回5g経口投与。腎機能障害には禁忌。 |
ストロンチウム-89 (Sr-89) | 物理学的半減期:50.53日 実効半減期:50日 放射線:β線 蓄積臓器:骨 |
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ストロンチウム-90 (Sr-90) | 物理学的半減期:28.79年 実効半減期:4.6年 放射線:β線 蓄積臓器:骨 |
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トリチウム | トリチウム (H-3) | 物理学的半減期:12.32年 実効半減期:8日 放射線:β線 蓄積臓器:全身 | 水分摂取による尿中排泄の促進、利尿剤 | 水分摂取(3-4L/日)、利尿剤 |
DTPA;Diethylenetriaminepentaacetic acid プルシアンブルー;フェロシアン化第二鉄
表9 臨床症状、検査所見と被ばく線量 ページ上部に戻る
急性放射線症の重症度と被ばく線量 | ||||||
軽症(1~2Gy) | 中等度(2~4Gy) | 重症(4~6Gy) | 極めて重症(6~8Gy) | 致死的(>8Gy) | ||
血液細胞 | リンパ球数 (x103/mm3) (被ばく後3-6日) | 0.8 ~ 1.5 | 0.5 ~ 0.8 | 0.3 ~0.5 | 0.1 ~ 0.3 | 0.0 ~ 0.1 |
顆粒球数 (x103/mm3) | >2.0 | 1.5 ~ 2.0 | 1.0 ~ 1.5 | ≦0.5 | ≦0.1 | |
血小板数 (x103/mm3) | 60 ~ 100 10 ~ 25 % | 30 ~ 60 25 ~ 40 % | 25 ~ 35 40 ~ 80 % | 15 ~ 25 60 ~ 80% | <20 80 ~ 100 %※ |
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潜伏期 | 長さ(日) | 21 ~ 35 | 18 ~ 28 | 8 ~ 18 | ≦7 | なし |
臨床症状 | 下痢 | なし | なし | 稀 | 被ばく後 6〜9日に出現 | 被ばく後 4〜5日に出現 |
脱毛 | なし | 中等度、被ばく後15日以降 | 中等度ないし完全 11〜21日 | 完全 11日以降 | 完全 10日以前 |
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その他の症状 | 倦怠感 衰弱 | 発熱、感染、出血、衰弱 | 高熱、感染、出血 | 高熱、嘔吐、めまい、 見当識障害、血圧低下 | 高熱、 意識障害 |
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予後 | 致死率 死亡時期※2 | 0 | 0 ~ 50 % 6~8週以降 | 20 ~70 % 4~8週以降 | 50 ~ 100 % 1~2週以降 | 100% ~2週 |
※1 50Gyを越すような高線量被ばくの場合は、血球減少の前に死亡する。
※2 治療内容により死亡率、死亡時期は変化する。