サマリー
- 病原体の特徴
- SARSコロナウイルス
- 径約100nmのスパイクのあるエンベロープを有する、1本鎖 RNAウイルス
- SARSコロナウイルス
- 分類と潜伏期間
- 通常2~10日で、平均約4~6日
- 感染経路
- ヒトからヒトへの感染は、飛沫感染や濃厚な接触感染が主体
- 空気感染もおこりうる
- 臨床症状
- 悪寒・発熱や頭痛、筋肉痛などのインフルエンザ様症状で発症。
- 咽頭痛や鼻症状は20%程度にしかみられない。
- 発症後3~7日後にほとんどの症例で乾性咳嗽が出現
- 60~80%の症例で息切れが出現
- 20~70%の症例で下痢がみられる
- その後80%程度の症例では改善傾向となる
- 残りの約20%の症例において呼吸不全が増悪
- その半数以上が人工呼吸管理を要する呼吸不全に陥る
- さらにその半数が死亡。
- 検体の種類および採取法
- 鼻咽頭洗浄・ぬぐい液
- 気道分泌物(喀痰,吸引採痰等)
- 末梢血
- 血清
- 尿
- 便
- 検体の輸送法
- 各検体とも、基本型三重包装容器を用いて輸送する。
- 微生物学的検査法
- PCR、LAMP法のよる遺伝子診断
- IgM抗体(IFA法)、IgM/IgG抗体(ELISA)の検出
- ウイルス分離培養
- 治療の要点
- 特異的な抗ウイルス薬はない
- ステロイドは激しい炎症性傷害を抑制する目的で使用されるが、種類や用量、投与期間、投与対象および投与時期などについては一定の見解は得られていない。
- 48時間~72時間の経過観察後に、血液ガスや画像所見が悪化傾向を示す症例のみにステロイドを投与する。
- 高齢者や基礎疾患を有する場合には、より早期からの治療開始を考慮する。
- 中等量(メチルプレドニゾロン3 mg/kg/日)のステロイドを用いて2~3週間の経過で漸減し、パルス療法(メチルプレドニゾロン1 g/日で3日間)は増悪時のレスキュー的に用いる。
- インターフェロンの使用も考慮してみる。
- 人工呼吸管理が必要となった場合には、確実な感染防御をおこなったうえで鼻マスクによる非侵襲的陽圧換気療法NIPPVを試みてもよい。
- NIPPVで十分な効果がみられなかった場合には、速やかに気管内挿管に移行する
2009年11月05日 13時58分 改訂