多剤耐性結核菌 – Multiple Drug Resistance tuberculosis

    1. 病原体の特徴
      • 原因病原体:結核菌(Mycobacterium tuberculosis)
      • 抗酸菌属、結核菌群 偏性好気性菌、グラム陽性桿菌
      • 抗酸菌染色で赤橙色の桿菌、酸・アルカリに抵抗性
    2. 分類と潜伏期間
      • 感染後の発病様式から、一次結核、二次結核とに分類される。また、罹患臓器により肺結核、腸結核、結核性リンパ節炎、粟粒結核等に分類される。
    3. 感染経路
      • 空気感染(飛沫核となった結核菌を吸入することにより感染が成立する)あるいは飛沫感染
    4. 臨床症状
      • 肺結核
        • 咳嗽、喀痰(ときに血痰)、発熱(通常微熱)、胸痛、食欲低下、体重減少、盗汗、呼吸困難など
      • 結核性リンパ節炎
        • リンパ節腫脹、発熱など
      • 粟粒結核
        • 発熱(一般的に高熱)、倦怠感、食欲低下、呼吸困難、意識障害など
      • 結核性髄膜炎
        • 発熱、頭痛、悪心、嘔吐、意識障害など
      • 腸結核
        • 発熱、血便・便通異常、腹痛、腹部腫瘤など
    5. 検体の種類および採取法
      • 肺結核
        • 喀痰、胃液、気管支洗浄液など
        • その他、罹患臓器によって血液、髄液、胸水、腹水、尿、便、骨髄、生検組織など..
        • 起床時に連続3日間採痰が望ましい
        • 自発痰が得られない時は、3〜5%高張食塩水を吸入させ誘発するか、起床後空腹時に胃液を採取する。
        • 随時痰であっても膿性であれば診断価値は高い。
        • 十分な喀痰が得られない症例では気管支鏡検査による気管支(肺胞)洗浄液の採取を考慮する。
      • 体腔液(胸水、腹水など
        • 無菌的に採取する。
        • 診断率向上のため可能な限り大量に採取する。
    6. 微生物学的検査法
      • わが国では一般的に「結核菌検査指針2007」に従って結核菌検査を行う。
        • 塗抹染色 抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色):赤橙色の桿菌
          • 抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色):赤橙色の桿菌
          • 蛍光染色(オーラミン染色)
        • 培養
          • 小川培地、MGIT培地(Mycobacteria Growth Indicator Tube)(BACTEC MGIT 960システムを含む)、KRD培地、BacteAlert 3D、Middlebrook7H9(液体培地)、Middlebrook7H10(寒天培地)など
        • 結核菌検出同定法(核酸増幅法を含む)
          • DDHマイコバクテリア(極東)
          • キャピリアⓇTB
          • PCR法(コバスアンプリコアTMマイコバクテリウム、コバスTaqMan MTB:Roche)
          • RNA増幅法(MTD法:Gen-Probe)
          • TRC rapid M.TB(東ソー)など
        • 免疫学的検査(結核感染の有無)
          •  結核菌IFN-γ測定(IGRA)( T-SPOT TB, QFT-plus)
        • 薬剤感受性試験(培養法)
          •  薬剤含有小川培地、ブロスミックMTB
        • 薬剤耐性遺伝子検出
          • フィノスLiPA・RifTB(RFP耐性菌検出:ニプロ)
      • 抗酸菌菌種同定、薬剤感受性試験に関しては(財)結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンスセンター細菌検査科でも問合せに応じている。
    7. 感染症における取り扱い
      • 平成19年に結核予防法が改正感染症法に統合される形となった。
      • 改正感染症法では結核症を二類感染症とし、病原体として多剤耐性結核菌を三種病原体(所持等の届出)、それ以外の結核菌を四種病原体として扱っている。
    8. 患者の隔離や汚染器材等の管理
      • 塗抹陽性患者など、他者への感染性が高い者については改正感染症法に従い入院勧告を行う。
    9. 治療の要点
      • 基本的には「結核医療の基準」に準じて治療を行う
        • 初回治療時
          • INH+RFP+PZA+EB(SM)の4剤併用で化学療法を開始する。感受性菌と判明したら上記治療を計2ヵ月間継続し、以後INH+RFPで4ヵ月治療継続する。PZAが使用不可の場合は、INH+RFP+EB(SM)の3剤併用で2ヵ月間治療後、INH+RFPで7ヵ月治療継続する。
        • 多剤耐性菌と判明時
          • 速やかに結核専門施設へ搬送するか、専門医と治療方針を相談する。
            1. 感受性の残った薬剤を序列に従って4剤以上選択し同時に投与する。治療期間は菌陰性化後24ヶ月間。高用量モキシフロキサシンを使用する方法もある。
            2. 限局性病変であれば外科的治療も考慮する。
            3. 新規抗結核薬は適格性認定システムに承認された医療機関で使用可能である。
          • 潜在性結核症
            • 一般的な結核菌感染では原則としてINH:5mg/kg/日(成人)、代替法としてRFP:10mg/kg/日。多剤耐性結核が疑われる場合は事項参照。
    1. 抗菌薬の予防投与
      • 多剤耐性菌に感染した可能性がある場合は通常、予防投薬をせずに観察することが勧められている。しかし、HIV感染者などのように結核発症のリスクが特に高い症例では予防投薬を考慮すべきである(詳細参照)。

2019年9月30日 19時54分 改訂