7.鼻疽・類鼻疽 – Glanders, Melioidosis

サマリー

  1.  病原体の特徴
    • 形態:いずれの菌もグラム陰性の好気性桿菌
    • 鼻疽
      • 鼻疽菌 (Burkholderia mallei)
      • グラム陰性の好気性桿菌
    • 類鼻疽
      • 類鼻疽菌 (Burkholderia pseudomallei)
      • グラム陰性の好気性桿菌
  2. 分類と潜伏期間
    • 急性感染例では1~14日間
      • ただし数年に渡る潜伏感染もある.
    • 鼻疽
      • 局所型、肺型,敗血症型、および不顕性型
  3. 感染経路
    • 保菌動物からの直接的な感染
    • バイオテロ:菌のエアロゾル化による散布
  4. 臨床症状
    • 局所感染:
      • 感染局所の皮膚やリンパ節に膿瘍形成,
      • 感染局所の潰瘍形成(鼻疽)
    • 肺型:
      • 発熱、咳嗽、喀痰、血痰など急激な肺炎症状
      • さらに肺膿瘍および結節性膿瘍など
    • 敗血症型(菌血症型):高熱、悪寒、ショック
      • 壊死性の皮膚の発疹
    • 不顕性型:
      • 数年間もの間,無症候性の慢性感染が続くことがある.その後免疫能の低下をきっかけとして発症.
      • ※バイオテロの場合は主に肺炎型からの発症し,高率に敗血症型への進展が予想される.
  5. 検体の種類および採取法
    • 血液,創部ぬぐい,膿分泌物,および喀痰など.
    • 血液培養はより感度を高めるために頻回に行う.
  6. 検体の輸送法
    • 喀痰,吸引採痰等は冷蔵状態にて輸送
    • 血液はカルチャーボトルで保温状態で輸送
  7. 微生物学的検査法
    1.  菌の分離・同定
      • ※本菌を扱うためにはレベル3の環境が必要
    2. 抗原の検出
      • 喀痰や膿の塗抹標本を用いた直接免疫蛍光法
    3. 遺伝子学的検査
      • PCR法
    4. 血清診断
      • 間接血球凝集反応あるいはELISA
  8. 患者の隔離や汚染器材等の管理
    • ヒトからヒトへの感染は起こりうる(肺型の場合は隔離についても考慮する)
    • 汚染部位の消毒:70% エタノール、次亜塩素酸ナトリウムなど
    • 汚染材料:焼却あるいはオートクレーブ滅菌
  9. 治療の要点
    • 鼻疽
      • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシンなど),テトラサイクリン系抗菌薬,ST合剤,セフタジジム、イミペネム、シプロフロキサシンなどを推奨.(重症例ではアミノグリコシドとST合剤の併用)
    • 類鼻疽
      • イミペネム、シプロフロキサシン、ドキシサイクリンなどを推奨(ゲンタマイシン耐性菌が存在)
      • (重症例では,クロラムフェニコール,ST合剤,ドキシサイクリンの多剤併用療法を行う)
  10. 抗菌薬の予防投与
    • バイオテロによる事件に遭遇した場合は、抗菌薬の投与による予防が推奨される

2009年11月09日 14時39分 改訂

バイオテロが疑われる状況と対応

chart_200911050930402009年11月05日 09時30分 改訂