15.Q熱 – Q fever

サマリー

  1.  病原体の特徴
    • 起炎病原体:コクシエラ・バーネティ(Coxiella burnetii)
    • 偏性細胞内寄生菌
  2. 分類と潜伏期間
    • 潜伏期間:2~4週間(平均20日間)
    • 伝播可能期間:自然界では長期に感染性を維持
  3. 感染経路
    • 自然界では多くの動物やダニが保菌
    • 不顕性感染している動物(ウシ,ヤギ,ヒツジ,ネコなど)から感染
    • 感染動物の分娩時に発生するエアロゾルや汚染された塵埃などの吸引
    • 非殺菌生乳の飲用
    • ヒトからヒトへの感染はまれ
    • バイオテロでは感染性のエアロゾルの散布や食品への混入がありうる
  4. 臨床症状
    • 急激な発熱,頭痛,眼球後部痛,筋肉痛、食欲不振,全身倦怠感などのインフルエンザ様症状
    • 肺炎症状
    • 肝炎症状
  5. 検査所見
    • 末梢血白血球数正常,血小板減少,貧血
    • CRP上昇,赤沈亢進
    • 肝酵素の上昇
    • X線・CTにて肺浸潤影
  6. 検体の種類および採取法
    • ヒト材料
      • 血液,血清,血漿,咽頭スワブなど
      • 環境・食品材料
  7. 検体の輸送法
    • 組織,臓器は冷蔵状態にて輸送
    • 血液,血清,血漿,咽頭スワブは冷蔵にて輸送
    • 全血は凍結せずに冷蔵,他は採取直後に輸送できない場合は-80℃
  8. 微生物学的検査法
    • 病原体検出法
      • 分離培養法
        • 実験小動物や発育鶏卵,培養細胞に接種・分離
      • 抗原検出法
        • ヒメネス染色,ギムザ染色,免疫蛍光抗体法
      • 遺伝子検出法
        • Nested PCR法,Real Time PCR法,LAMP法
      • 血清抗体測定法
        • 間接蛍光抗体法(IF法)
          • IFAキット(Focus社製他)
        • 酵素免疫抗体法(ELISA法)
          • ELISAキット(PanBio社製他)
  9. 治療の要点
    • Q熱では早期から有効抗菌薬(テトラサイクリン系やマクロライド系)を投与.重症例ではミノサイクリンの点滴静注
    • 重症例では全身管理(補液,酸素吸入など)
    • 治療期間は2週間
    • 初期治療
      • 点滴静注
        • ミノサイクリン点滴静注 (成人:200mg/日,分2)
        • 小児,妊婦ではマクロライド系薬 (エリスロマイシン)の点滴静注 (40~50mg/kg/日,分2)
      • 内服治療
        • ミノサイクリン (成人:200mg/日,分2 小児:2〜4mg/kg/日,分2)
        • クラリスロマイシン(成人:400mg/日,分2 小児:10〜15mg/kg/日,分2)
        • ニューキノロン薬も効果が期待できる。

2009年11月10日 16時11分 改訂

バイオテロが疑われる状況と対応

chart_200911051734432009年11月05日 17時34分 改訂