2.天然痘 – smallpox

  1. 病原体の特徴
    • 起炎病原体:天然痘ウイルス
      自然界の中では比較的安定で低温や乾燥に強いが、紫外線やアルコール、ホルマリンで容易に不活化される。
      人間が唯一の自然宿主。
  2. 分類と潜伏期間
    • 平均12-14日間で、7-17日間の範囲。
    • 潜伏期間中は他への感染力はない。
  3. 感染経路
    • 飛沫感染が主。衣類などを通した接触感染や、まれに空気感染もありうる。
    • 感染期間は、初期症状出現時から発疹が痂皮化して完全に脱落するまでの期間。
  4. 臨床症状
    • 初期症状は、急激な発熱、倦怠感などのインフルエンザ様症状。その後、一時的に解熱傾向となると同時に発疹が出現。
    • 舌、口腔内に有痛性の小紅斑が出現し、その後、発疹が通常は顔面→四肢(手掌足底)→体幹の順に広がる。
    • 発疹は体幹部より顔面や四肢末梢側に優位である。
    • 発疹は、紅斑→丘疹→水疱→膿疱→結痂→落屑と規則正しく移行する。
  5. 検体の種類および採取法
    • 全血:ヘパリン加血(5ml)
    • 水疱・膿疱:PBSを0.1〜0.2ml入れた注射針(26G)付きの1mlの注射器を疱膜から挿入して、2〜3回ポンピングして内容液を採取。
    • 痂皮:ピンセットで採取。
    • 咽頭スワブ
    • 血清
  6. 検体の輸送法
    • 各検体とも、基本型三重包装容器を用いて輸送する。4ºCに冷却し、凍結しない。
  7. 微生物学的検査法
    • 血液塗抹標本や水疱・膿疱液、痂皮の電顕によるウイルス粒子検出、および抗原検出。
    • 全血や水疱・膿疱液、ぬぐい液などからのウイルス分離、PCR。
    • 血清中の抗体検査。
  8. 治療の要点
    • 特に感染初期は、ワクチン接種により効果が期待されるため、曝露していることが確実である場合には、発症前であれば接種を試みる。
    • 特異的な治療薬はなく、発症後の治療は対象療法が中心となる。
    • シドフォビルの臨床的有用性を示すデータはないが、臨床比較試験をおこなう意義は残されている。

2009年02月17日 14時02分 改訂