サマリー
- 病原体の特徴
- 起炎病原体:ペスト菌(Yersinia pestis)
グラム陰性の多形形態を示す桿菌(安全ピン様の形態)
主にマウスなどの齧歯類が保菌し、ノミを介して感染
- 起炎病原体:ペスト菌(Yersinia pestis)
- 分類と潜伏期間
- 腺ペスト、敗血症ペスト、肺ペストに大別される
- 潜伏期:腺ペスト(3~7日),肺ペスト(2~3日)
- 感染経路
- 腺ペスト:ノミの刺し口より感染
- 肺ペスト:飛沫感染
- バイオテロ:菌のエアロゾール化による散布の可能性
- 臨床症状
- 腺ペスト
- 局所症状
- リンパ節腫脹および疼痛など
- 全身症状
- 急激な発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、悪寒、倦怠感、嘔吐、筋肉痛など
- 敗血症ペスト
- 腺ペストから敗血症への移行
- ショックおよびDIC
- 肺ペスト
- 腺ペスト末期や敗血症ペストの経過中に起こる(二次性肺ペスト)
- 高度な頭痛、嘔吐、高熱、呼吸困難、血痰
- 重篤な肺炎への急速な進行.
- ※バイオテロの場合は肺ペストの状態から発症(原発性肺ペスト).
- 検体の種類および採取法
- 血液、リンパ節穿刺吸引物、喀痰、生検組織等
- ※血液培養は,抗菌薬投与前に3回検体を採取する.
- (1回目と3回目の採取の間隔は1時間程度開ける)
- 検体の輸送法
- 喀痰,吸引採痰等は冷蔵状態にて輸送
- 血液,髄液はカルチャーボトルで保温状態で輸送
- 微生物学的検査法
- 菌の分離・同定
- 抗原の検出◦菌体抗原に対する蛍光抗体法など
- 遺伝子学的検査◦PCR法
- 血清診断◦血清抗体価(抗Fraction 1抗原)
- 感染症における取り扱い
- ペストは、感染症法において1類感染症に分類(直ちに最寄りの保健所に届ける)
- 地域の特定感染症指定医療機関、もしくは第1種感染症指定医療期間への入院措置が行われる.
- 患者の隔離や汚染器材等の管理
- 肺ペストはヒトからヒトへの感染を起こす (患者は隔離の対象)
- 汚染器材等の消毒には次亜塩素酸ナトリウム溶液など
- 治療の要点
- 肺ペストでは抗菌薬の病初期からの投与が必須
- 【推奨される薬剤】
- •アミノ配糖体系(硫酸ストレプトマイシン筋注、ゲンタマイシン筋注又は点滴静注)
- テトラサイクリン系(ドキシサイクリン内服)
- ニューキノロン系(シプロフロキサシン点滴静注,スパルフロキサシン内服,レボフロキサシン内服)
- 抗菌薬の予防投与
- バイオテロによる事件に遭遇した場合は、抗菌薬の投与による予防が推奨される.
- ドキシサイクリン100mg 1日2回内服、またはシプロフロキサシン500mg 1日2回内服
2018年3月 改訂