サマリー
- 病原体の特徴
- 形態:いずれの菌もグラム陰性の好気性桿菌
- 鼻疽
- 鼻疽菌 (Burkholderia mallei)
- グラム陰性の好気性桿菌
- 類鼻疽
- 類鼻疽菌 (Burkholderia pseudomallei)
- グラム陰性の好気性桿菌
- 分類と潜伏期間
- 急性感染例では1~14日間
- ただし数年に渡る潜伏感染もある.
- 鼻疽
- 局所型、肺型,敗血症型、および不顕性型
- 急性感染例では1~14日間
- 感染経路
- 保菌動物からの直接的な感染
- バイオテロ:菌のエアロゾル化による散布
- 臨床症状
- 局所感染:
- 感染局所の皮膚やリンパ節に膿瘍形成,
- 感染局所の潰瘍形成(鼻疽)
- 肺型:
- 発熱、咳嗽、喀痰、血痰など急激な肺炎症状
- さらに肺膿瘍および結節性膿瘍など
- 敗血症型(菌血症型):高熱、悪寒、ショック
- 壊死性の皮膚の発疹
- 不顕性型:
- 数年間もの間,無症候性の慢性感染が続くことがある.その後免疫能の低下をきっかけとして発症.
- ※バイオテロの場合は主に肺炎型からの発症し,高率に敗血症型への進展が予想される.
- 局所感染:
- 検体の種類および採取法
- 血液,創部ぬぐい,膿分泌物,および喀痰など.
- 血液培養はより感度を高めるために頻回に行う.
- 検体の輸送法
- 喀痰,吸引採痰等は冷蔵状態にて輸送
- 血液はカルチャーボトルで保温状態で輸送
- 微生物学的検査法
- 菌の分離・同定
- ※本菌を扱うためにはレベル3の環境が必要
- 抗原の検出
- 喀痰や膿の塗抹標本を用いた直接免疫蛍光法
- 遺伝子学的検査
- PCR法
- 血清診断
- 間接血球凝集反応あるいはELISA
- 菌の分離・同定
- 患者の隔離や汚染器材等の管理
- ヒトからヒトへの感染は起こりうる(肺型の場合は隔離についても考慮する)
- 汚染部位の消毒:70% エタノール、次亜塩素酸ナトリウムなど
- 汚染材料:焼却あるいはオートクレーブ滅菌
- 治療の要点
- 鼻疽
- アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシンなど),テトラサイクリン系抗菌薬,ST合剤,セフタジジム、イミペネム、シプロフロキサシンなどを推奨.(重症例ではアミノグリコシドとST合剤の併用)
- 類鼻疽
- イミペネム、シプロフロキサシン、ドキシサイクリンなどを推奨(ゲンタマイシン耐性菌が存在)
- (重症例では,クロラムフェニコール,ST合剤,ドキシサイクリンの多剤併用療法を行う)
- 鼻疽
- 抗菌薬の予防投与
- バイオテロによる事件に遭遇した場合は、抗菌薬の投与による予防が推奨される
2009年11月09日 14時39分 改訂