病原体の特徴
ヘンドラウイルス感染症は、パラミクソウイルス科ヘニパウイルス属ヘンドラウイルスにより引き起こされる疾患である。1994年にオーストラリアのブリスベン近郊のヘンドラで発生したことからこの名前がつけられた。オオコオモリが自然宿主で、オオコオモリの尿などで汚染された牧草を介してウマに感染し、そのウマの体液などを介してヒトに感染する。
主な臨床像
発熱・筋肉痛などのインフルエンザ様症状や重篤な肺炎・脳炎の報告がある。2010年8月までに、7例の罹患報告があり、4例が死亡している。
臨床検査所見
特異的な所見はない。
確定診断
- ウイルス抗原・遺伝子検出による診断
鼻咽喉スワブ、尿、脳脊髄液などからのウイルス分離、RT-PCR法によるウイルス遺伝子の検出を行う。病理学的検査において、ウイルス抗原を検出する(免疫組織化学検査)。
ウイルスの抗体検出による診断
検査材料は血清である。検査実施前には,56℃で30分処理の熱非働化処理を要する。スクリーニングとしては、ELISA法によるIgG, IgM抗体検出が一般的であるが、非特異反応が多く認められるため、確定診断にはならない。確定診断には、中和試験を行う必要がある。
治療
特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。抗ウイルス薬リバビリンが用いられることがあるが、その治療効果については評価が定まっていない。
予防(ワクチン)
有効なワクチンはない。
バイオハザード対策
患者の隔離
標準予防策を徹底する。我が国では、BSL-3(以上)の実験室で取り扱われる病原体である。なおBSL-4施設が稼働している諸外国では、BSL-4実験室にて取り扱われている。
参考文献
- CDC, CDC Fact Sheet:Hendra Virus Disease & Nipah Virus Encephalitis, http://www.cdc.gov/ncidod/dvrd/spb/mnpages/dispages/nipah.htm
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項および第14条第2項に基づく届け出の基準について、厚生労働省健康局結核感染症課長通知、2006年3月